第6話 トイレの美少女

「う~ん暑いなぁ~、暇だぁ~」


家の中でゴロゴロしているけど、何も変わらない。


せっかく友達になったのに、愛子ちゃんも望ちゃんも引っ越していっちゃった。


まぁ僕も突然引っ越ししたから同じかな。


ゲームもやり飽きたし、新しい漫画も無い。


仕方なく僕は今日も散策に出掛けた。


駄菓子屋さんを見つけて梅ジャムを食べた。


10円のオレンジガムを5個買ってポケットに突っ込んだ。


今日は何処に行こうか? 


まぁ行く当てもないし適当に歩くしか無いんだけどね。


周りは歩き尽くした感じがする。


少し足を延ばして遠くまで行った。


とはいえ歩いて片道1時間くらいだけど。


しかし、本当につまらないな。


神社やお寺はあったけど…見ても面白くないし…


商店街はあるけど、近所と何も変わらない。


古本屋があったから、100円の漫画を買った。


昔からある古本屋で難しい本ばかりで漫画が少し…ゲームやDVDも無いから、暇つぶしも出来ない。


暫くそこから奥へ歩くとまた公園があった。


望ちゃんが居た公園より大きな公園があった。


ブランコとうんてい…滑り台もあるが…なぜかこの公園には人が居ない。


暫く遊んでいると…トイレに行きたくなった。


ううっ漏れそうだ…


勢いよくドアを開けると…


「嫌ぁぁぁぁぁー―――っ」


「ごめんなさいー-っ」


慌てて僕はトイレを飛び出した。


トイレの中から女の子が手招きしていた。


綺麗な黒い髪のおかっぱ頭。


眼は大きく肌は白くて凄く綺麗。


赤いミニスカートにTシャツ…凄く可愛い女の子だ。


鍵をかけていなかったのは向こうが悪いと思うけど…女の子のトイレを覗いてしまったんだから、行って謝るしかないよね。


しかし何であの子、トイレから出てこないんだ?


「ごめんね、いきなり開けちゃって」


「良いよ、私も鍵を掛けなかったのが悪かったし、もう済んでスカート履いた後だし…うん良いよ、だけどお兄ちゃんカッコ良いね」


「そうかな? あまりそんな事言われた事ないよ」


「ううん、凄くカッコよいよ、お兄ちゃん暇?」


「まぁ凄く暇だよ…引っ越して来たばかりなんだ」


「ふ~ん、それでこの公園に来たんだね、私は花子、お兄ちゃんは?」


「僕は理人、宜しくね」


だけど、愛子ちゃんと言い、望ちゃんといい、花子ちゃんも皆、凄く可愛い。


東京に引っ越してきて本当に良かった。


「それじゃお兄ちゃん、遊んでくれる?」


「うん、それじゃブランコにでも乗る」


何だろう、花子ちゃんが悲しい顔をした気がした。


「あのね、花子トイレから出られないの」


そういう遊びが流行っているのかな。


「そう、トイレの中でも良いけど…何して遊ぼうか?」


「うんとね、花子解らない」


色々考えて、持っていた紙とペンでまるバツやあみだくじをして遊んだ。


「こんな事しか出来ないけど良いの?」


「うん、お兄ちゃん凄く楽しいよ」


それは良いんだけど、トイレの中で女の子と二人で遊ぶ。


幾ら僕が子供でも、なんとなく気まずい。


狭い個室だから顔も近いし、隣から息が聞こえる。


さらに見るとシャツの隙間から胸が見える。


「理人お兄ちゃんのエッチ」


「ごめん、そんな気は無かったんだよ…本当だよ」


「まぁ別に良いよ、お兄ちゃんなら気にしないから」


「そう?」


「うん、花子、理人お兄ちゃん大好きだもん」


少し小さい子でも『大好き』と言われると嬉しくなる。


「僕も花子ちゃん、好きだよ」


「そう…凄く嬉しいな、それなら花子と死ぬまでトイレで暮らさない?」


「えっ…」


可笑しいな何だか眠くなってきた。


いつも可愛い女の子からの告白を聞くと…なんで…眠くなるんだ。


◆◆◆


『この子は渡さないわよ…クソガキ』


「嫌だって言ったら…ごめん、いや、殺さないで、諦めるから…やっと見つけた、お兄ちゃんなの…どうにか…解った、あきらめるよ」



◆◆◆


気が付くと僕はトイレで寝ていた。


花子ちゃん…夢だったのかな?


あれ…これは花子ちゃんのリボン。


花子ちゃん、また会えるといいけど、僕が寝ていたから帰っちゃったのかな…明日ここに来れば会えるかな。


◆◆◆


その後、何回も足を運んだけど、僕は二度と花子ちゃんに会えなかった。


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