あのくじらのように

白鯨くじら

第1話空に浮かぶもの

街中の人々はみんな一点を見ていた。

空に透明な何かが浮かんでいた。

まるで魚のような何かが。

「ピューイ」

その鳴き声と共に浮かんでいた何かが消えた

どちらかと言えば消えたのではなく弾けたと言った方が正しいのだろう。

それが見えなくなった瞬間ものすごい量の水が降ってきた。

周りの人達は全員びしょびしょになっていた

その中に僕と彼女も入っていた。

それが僕らの出会いだった。

それから数日後あの出来事を忘れたかのように普通に過ごしていた。

「秋人ー食堂行こうぜー」

そう僕の友達の坂下楓君が呼んでる。

「ちょっと待ってよ楓君」

楓君と一緒に食堂に行っていると女の人が僕の隣を通った。いつもなら何も感じないのだが今日は何かおかしかった。

なんだろう。どこかで見かけた気がする。

「秋人って彼女いる?」

唐突に楓君に聞かれた。

「唐突にどうしたの?いるわけないじゃないか友達でさえ少ないのに」

僕は何故か友達が少ない。

男子たちにはキモイと離れられ、

女子たちにはカッコイイと言われ近寄られるけれどなんか、その、ちょっとキモイ。

だから僕はあまり友達がいない。

いや、正確には作らないの方が正しいかもしれない。男友達は無理でも女友達は行けると思うけど僕はあまり女の子に耐性がない。

「だよな。すまんなんか悪いこと聞いたかも」

「いや、大丈夫だよ。僕は楓君がいてくれるだけでも十分だから。」

食堂で食事を済ませたあといつも通り楓君と遊ぼうとしていたら

「あの〜赤木秋人君だよね?」

と後ろから声をかけられた。

「そ、そうだけどどうしたの?」

「あの日のこと覚えてる?」

「あの日のこと?」

「そう!凄い量の水が降ってきた時のこと」

「あー覚えてるよ。それがどうしたの?」

「その時空に何か魚みたいなの浮かんでたじゃん。あれまた見たんだよね」

「そうなの?」

「うん!そうなの!ねぇ聞いて!その時にまた凄い量の水が降ってきてさーまたびしょびしょになっちゃったんだよね」

「そうなんだ。それはそれは残念だったね」

そう反応に困っていると後ろから楓君が肩を組んできた。

「ごめんなこいつ今から俺も遊ぶんだわ。

えーっと櫻井春奈だったっけ?」

「 そっか〜じゃあまたね秋人君!」

「う、うん」

「嵐のような人だったな」

「うんそうだね元気な人だった」

「で、なんの話ししてたの?」

そう楓君に聞かれたから僕はあの日のことを事細かに話した。

「そんなことがあったんだな」

「そうだよ。めっちゃ大変だったよ。制服がびしょびしょに濡れるし学校に遅れるし」

楓君とそう話しながらショッピングセンターまでの道のりを歩いていると

「ピューイ」

と空から鳴き声が聞こえた。

「なんの音だ?」

と楓君が言うと空にはまた魚のような何かが浮かんでいた。

「あれだよ楓君。あの魚みたいなやつ」

「あれは魚じゃなくて鯨だろ」

「どっちでもいいから早く離れようよ」

「いや、面白そうだ一回濡れてみようぜ」

「僕はもう一回濡れてるってのほら早く。」

そうするとまた

「ピューイ」

と鳴き声を出した。

その瞬間また水が降ってきた。

「…濡れたな」

「…だから言ったじゃん」

「…今日は帰るか」

「…そうだね」

翌日僕は風邪を引いた。

病院に行くとそこには彼女の姿があった。

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