第423話
好奇心を覚えながら腕を引かれて入る。薄暗い通路を少し進んだ先にまた扉があり、たま子がそれに触れて開ける。
再び明るい無人の空間に連れ出された瞬間、安治は息を飲んだ。
予想よりずっと広い。そして――。
「何ここ、司令室?」
アニメで見るような司令室の光景がそこにはあった。
中央にはミーティング用の大きなテーブルがあり、三方の壁には個人の作業スペースらしいデスクが並べられている。いろいろな器具や装置が所狭しと置かれ、一方の壁は全面が巨大なスクリーンになっていた。
「研究室だ」
たま子は簡単に言って、中央のテーブルの椅子の一つを引き、自分はその隣に座った。
引いてもらった椅子に腰かけながら、安治はつい部屋中をきょろきょろと見回してしまう。ほこりと金属と薬品が混ざったような独特な匂いに加え、照明も何だか銀色がかって感じられる。宇宙船の操縦室にでも来たような、現実離れした気分になった。
「ここが研究室なんだ……。てっきりあっちの部屋だと思ってたよ」
「あっちは、何て言うか、事務室だな。デスクワークをしたり、休憩したり、資料を閲覧したり。研究員はこっちで研究に専念している」
「あ、なるほど。だから見たことない人たちがいたんだ。いつもはこっちにいるのか」
「ああ、あれが所属している研究者たちだ。ボクはただの使いっ走りだから、研究には参加してない。頼まれれば手伝うけどな」
「ふうん……戸田山さんは?」
「あれは班長補佐だ。研究員の相談に乗ったり、姐さんの秘書的なことをしている。総合的に見ると、うちの班で一番優秀な人だ」
――ん?
「一番優秀なのは班長じゃないの?」
素朴に問いかける。たま子は頷いた。
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