除ヤツハシと雪柳
第403話
五分ほどかかってみち子を室内に連れ戻したとき、他の三人はいくらか回復していた。身体を背もたれや壁に預けてぐったりと座り込んでいる。
タナトスは戸田山の隣に座って、お茶が入ったカップを差し出していた。片手で額を押さえた戸田山は、覚束ない手つきでそれを受け取ろうとしている。
安治とたま子は反対側のソファにみち子を座らせた。こちらも同じく片手で額を押さえている。まだ正気が戻っていないのか、うーうーと唸って反抗を試みるものの、身体も思考もうまく動かせない様子だ。
「頭、痛いんですか」
どちらにともなく問いかける。戸田山が軽く頷いた気がした。視線を向けてどきっとする。涙を流していた。
「冷凍庫に保冷剤があった気がする。冷やしますか」
タオルを渡しながらたま子が訊く。戸田山はそれを顔に押し当てながら首を横に振った。身体が小刻みに震えている。感情を堪えているのだろうか。
「タナトス、こっちおいで」
邪魔になってはいけないと慌てて呼ぶ。たま子も口を添えた。
「そうだ、お前ら、掃除に行ってこい。ここはもう平気だから」
「うん、そうする」
替えの紙パックと廃棄物用の巾着袋をタナトスに持たせ、自身はハンディクリーナーを持って安治は通路に出た。
先ほど綺麗にした場所はまだそのままだ。しかし左右を見渡して溜め息をつきたくなる。この通りを片づけるだけでどれほどかかるだろう。
「全部綺麗にしなくていいのよ。人だけ助けてちょうだい」
いつの間にか横をすり抜けていた所長が先導する。
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