第373話

「ダイモンは幽霊みたいなものなんだよね? 触れたりはしないんでしょ?」

「例えるならご先祖様や神様みたいなもの。シラクサにはそれが見える。らしい」

「ああ――ちょっとイメージわいた」

 安治の実家には仏壇も神棚もあり、祖母が毎日お供えをしたり拝んだりしていた。祖母には拝む対象は見えていなかったと思うが、見えるならまさにソレと生活をしている状態だろう。

「で、シラクサがいなくなって、ダイモンだけ残ったってこと?」

「そう考えられている」

「ふうん……それって人の形なのかな。生きてる人みたいに見えるとか?」

「知らない。シラクサの血を引いた人には見える」

「……え?」

 ――じゃあ俺。

 ぞわっとしてから気づき、考えを否定する。

 ――あれはゲームの中の話だ。

 お前にも見えるはずだとたま子に言われたのは現実ではない。ゲームの中だ。

 しかし、現実のたま子にもダイモンの話をされなかったか。よく思い出せない。現実とゲームがごっちゃになっている。

「あのさ、たまちゃんって見える人?」

「たま子はシラクサ」

 さらりと返された言葉に、またしてもぎょっとする。

「シラクサはもういないって言わなかった?」

「いないとされている。今シラクサと呼ばれるのは、シラクサの血を引いた人のこと。たま子や琥太朗など」

「琥太朗?」

 小柄な美少年の姿が思い浮かぶ。

 ――実在の人物だったのか。

 そういえば髪の色が金に近いほど明るく、西洋人的な肌の白さと整った顔立ちをしていた。

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