第372話

「顔は?」

「顔も」

「それ、外国人なんじゃなくて?」

 タナトスは日本人と西洋人が七対三で混ざったような顔をしている。彫りが深いというよりも、立体的な顔立ちだ。だからどの角度から見てもくっきりしている。その特徴が共通しているというのであれば――シラクサというのは、昔渡来した西洋人の末裔が隠れ住んでいた村だったのではないか。

「言葉は? 普通に通じたの?」

「通じない。シラクサはしゃべらない」

「しゃべらない? よそ者とはしゃべらないってこと?」

「違う。シラクサは言葉を話さない」

「言葉を話さない?」

 それも何だか不気味な感じがして、ついオウム返しをしてしまう。

「それって、仲間同士でも会話をしないってこと?」

「そう」

「そんなことある?」

 疑問に思うと同時に、何となく掴めてきた。やはりシラクサというのは、大昔に渡来した西洋人と結婚した日本人の末裔なのだろう。背が高く西洋人的な顔立ちなのはそのせいだ。言葉が話せなかったり髪が白かったりするのは、孤立した環境で近親婚を繰り返した結果か、異なる人種が交配した結果の突然変異に違いない。

「で、ダイモンっていうのは、そのシラクサの幽霊なわけ?」

「違う」

「違う? さっきそんなようなこと言わなかった?」

「幽霊みたいなものと言った。白草谷の名残と言った」

「名残?」

「おそらくシラクサは、ダイモンと生活していた」

「――と、生活?」

 妙な表現だ。

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