第360話

「私が言い返すとマナミはしばらく黙って、反省したように謝ってきた。私も気まずくなって、これからご飯作るから食べていかない? って聞いた。買い物に出る前から今日は焼きそばにしようって決めてたから。料理はそれほど得意じゃないけど、焼きそばなら市販の麺とソースを使うんだから、それなりにはおいしくできる」

 ――焼きそば、よく作ったな。天かす入れたり、肉の代わりにかまぼこ入れたり、もやしで量を増やしたり。お湯を入れてラーメンにしようとしたのは失敗だったけど。

「するとマナミはぱっと表情を明るくして、じゃあデザートは私がおごるよ、シュークリーム食べたいな、暗くなる前にコンビニに買いに行こうよ、と言ってきた。レナちゃんも同じでいい? とも聞かれた。レナは返事をしなかったけど、私はマナミの気遣いが嬉しくて、レナよかったね、デザートはシュークリームだよ、と寝室に向かって声をかけた」

 ――マナミ、主人公をどこかに誘導しようとしてる?

「私はマナミと近くのコンビニに向かった。ところがコンビニに入る前にマナミは私の手を掴んで、来て、とだけ言って私を引っ張った。私は驚いて、どこに行くの、と聞いたけど、マナミは怖い顔で、いいから、としか答えてくれなかった」

 ――やっぱり。

「マナミに連れて行かれたのは近くの一軒家だった。いかにもお祖母ちゃんの家って感じの、古めかしい木造の家。両隣はごく最近できた感じの家で、間に挟まれたそこだけ茶色くくすんで見えた」

 ――実はもう存在しない家で、そこだけ時空が歪んでるとか?

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