第352話

「何これ、アイドル?」

 軽く興奮して訊く。タナトスは特に表情を変えることなく、見出しを見て答えた。

「幽玄楼はファミリー直営。有望な人材が集まる」

「え……そうなんだ」

 ――直営?

 ファミリーが花街に店を持っているのか。ファミリーとは役所のようなもの……というイメージを持っていたので意外だった。

 続いての特集は「幽玄楼ピックアップ」。また幽玄楼だ。ランキング七位と一二位の子が個別に紹介されている。

 安治は二〇位の子が可愛いと思った。丸顔に垂れ目で、ガチャピンに似ている。

 その後は他のお店のランキング及びピックアップが続いた。こちらは幽玄楼の扱いに比べると構成が省スペースだ。顔写真を見ても、幽玄楼にマチ中の美女が集中しているのがわかる。

 ――ひょっとしてこの雑誌、ファミリーが出してる?

 ならば図書室で配っているのも頷ける。

 もう一度カラーページに映った美女たちをぱらぱらと見返し、コーヒーを飲みながら頭を整理する。まとまった。

「――うん」

「う? 何?」

「いや、何でも。――お前が訂正した意味がわかったよ」

 女の子ではなく娘――。娘というのはつまり――。

「あのさ」

「う?」

「おりょうちゃんって、ここに勤めてた?」

 多分そうだろうと確信しつつ訊く。幽玄楼からファミリーへ。そういう就職ルートがあるに違いない。売れっ子だったことも想像がつく。愛嬌のあるタイプよりもおりょうのようなシャープな美貌に人気が集まるようだから。

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