第351話
「貧乏暇なしの反対って何だと思う?」
「反対?」
タナトスは訝しげに眉根を寄せつつも即答した。
「お金持ちは暇」
「うーん」
そうだろうか。稼いでいる人ほど忙しい気がする。資産を築いた後なら遊んで暮らせるかもしれないが。
資産を築くまで、つまり稼ぐ必要のある状態を「貧乏」と呼ぶのだと解釈すればいいのか。
しかし貧乏というのは普通、単純にお金がないことを指すだろう。どれだけ働いているか、働く必要があるかに関わらず。
納得していない様子の安治を見て、タナトスは次の案を出した。
「では、暇な人はお金持ち」
「うーん? それじゃあ、暇だからお金持ちって意味になっちゃうよ」
「適切でない?」
「暇してたらお金は稼げないでしょ……」
言いながら開いたページに視線を落とす。まだ一〇代に違いないガラス細工めいた美貌が、気高い女神のごとき微笑を浮かべている。
――まあ、この顔に生まれたら……。
遊んでいるだけでお金のほうから寄ってくるかもしれない――と納得する。
目の前の美貌もそうだ。もしタナトスがソトで暮らしていたなら、道を歩いただけでモデルやホストにスカウトされ、家でも車でも貢ぎたい人が押しかけるだろう。
却って自力で稼ごうとあくせくしているほうが、くたびれた感じが出て輝きを失うに違いない。
コーヒーを一口啜ってページをめくる。と、今度は「幽玄楼ランキング」とあった。所属している全員なのだろうか、二四位までがずらっと並んでいる。
「……うわー……」
思わず声が出た。見事に全員、美人だ。
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