第350話
三位もやはり高嶺の花といった感じではあるものの、年齢は少し上のようだ。この業界では年長の部類に入るのかもしれない。週五日、五時間ずつの接客とある。
四位と五位は、それに比べるといくらか親しみやすい雰囲気だった。どちらも週五日、六時間ずつ働いているらしい。
見事に順位と接客時間が比例している。一位が週九時間、五位が週三〇時間だから、三倍強の差だ。勤務時間としては短いする気もするけれど、これは店に出ている時間のみで、実際の労働時間はもっと長いのかもしれない。そもそも花街と言えば、通いではなく住み込みのイメージがある。
「貧乏暇なし」
思い浮かんだ言葉を安治が呟くと、向かいのタナトスが「う?」と顔を上げた。
「まあ、タナトスには関係ないよね」
「そのことわざは知っている。貧乏とはどういう状態?」
「お金がないんだよ」
言いながら、タナトスにお金の話をしてもわからないだろうなと思う。案の定、続けざまに質問が飛んできた。
「お金がないと、どういう状態になる?」
「余裕がなくなるね」
「何の余裕がない?」
「だからお金。あと、心」
「お金がないと余裕がない。では、お金と余裕は同じ?」
「え?」
問われて迷う。お金がない、余裕がない――。同じ意味で使う場面は確かにある。しかしお金と余裕が同じ意味かと問われると……。
否定したい反面、やっぱり同じような気がした。
面倒になった安治は考えるのをやめて、質問を投げ返す。
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