第349話
「……娘?」
どこか聞き慣れない表現に違和感を持つ。普通、女の子と言わないか。
タナトスはそれ以上の質問を拒否するように優雅な仕草でミルクティーのカップに口をつけると、アニメ風のイラストが表紙を飾る小中学生向けの怪奇小説を開いた。
安治はもう一度タイトルを見つめる。『娘ランキング』。娘とは――。
続きのページに戻る。グラビアの後は「鳥居町ランキング」だった。順位をつけられた五人の美女がプロフィールとともに紹介されている。真広は二位だ。
――幽玄楼、幽玄楼、幽玄楼……。
プロフィール欄を見てすぐに気づく。五人中上位三人のところに幽玄楼の文字があった。さすがに店の名前なのだと察しがつく。他二人のところには別々の店名が書かれている。
――一人勝ちなんだな。
意識せず五人を見比べる。
真広も相当に可愛いと思ったが、一位の美女はそれに劣らず透明感があり、見た目の完璧さはほとんど作り物の域だ。写真のせいなのか、それともそういう個性なのか、近寄りがたい高飛車な雰囲気を纏っている。
プロフィール欄にはそれぞれの接客時間も載っていた。真広は週に四日、一日六時間ほど店に出ているようだ。一位の美女は週に三日、三時間ずつしかいないらしい。
――週九時間勤務? 大学生のバイト?
それで一位なら、きっとものすごく割りの良いバイトだ――と思ってから、このマチには大学がないことを思い出す。
副業だから短時間なのだろうか。それとも人気があるのでそれで十分という判断なのだろうか。単純に働くのが嫌いなのかもしれない。もったいをつけるためにわざと時間を絞っている可能性も――。
予約の可否については書かれていない。きっと彼女に接客してもらえるのは運が良い人だけなのだろう。
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