第348話

 タナトスはまだ戻って来ない。棚の裏側に回って熱心に何かを探している。それを確認してからページをめくる。

 冒頭の企画はアイドルのような美少女のグラビアだった。真広まひろという名前らしい。いろいろな場所、服装で何枚も写真を撮っている。

 一〇ページほどあり、何枚かある和装の写真を見て気づいた。これが表紙の花魁だ。洋装の写真では清楚なアイドル風、和装の写真では大人っぽくセクシーに映っているのでわからなかった。

 メイクの力もあるのだろうが、元が相当な美人に違いない。思わずきれいな肌と愛らしい顔立ちに目が釘付けになる。眼福という言葉の通り、見ているだけで気持ちいい。

 ――可愛いな。

 素直に思った。年齢は一八歳くらいだろうか。胸元にはくっきりした谷間があり、プロフィール欄にはDカップと書かれている。

 ――『幽玄楼』?

 プロフィール欄にある単語は何なのだろう。何の説明もないが、建物名に違いない。この子が所属している施設か団体の名前だろうか。

「タナトス、これって」

 ちょうど向かいの席に座ったところのタナトスに訊く。

「鳥居町で働いてる女の子のランキングってこと?」

 タナトスはミルクティーに伸ばしかけた手を止め、一秒ほど考えてから答えた。

「鳥居町で働いている娘のランキング」

「……うん?」

 肯定されたのだろうか、否定されたのだろうか。

 タナトスは頷く動作をしなかった。表情から察するに、否定して訂正されたような。しかし、どこを。

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