第345話
――何だこれ?
慌てふためきつつも冷静に考えようと試みる。
まず、図書室で配っているくらいなのだから、いかがわしい雑誌のはずがない。それは確実だ。
ならば被写体ではなく、撮影者や撮影技術のほうに意味があるのだろうか。カメラ専門誌、もしくはアート……いや、文芸や映画の本かもしれない。花魁は時代もののイメージで。
あるいはロボット専門誌。一瞬なので人間と思ったが、実はよくできた最新のロボットが人間らしいポーズで写っていただけとか……。
考える横で、次から次に平積みの山が減っていく。訪れる人が皆、当たり前のように一冊ずつ取っていくためだ。
一方でタナトスはそれを気にする様子がない。間違いなく視界には入っているのに興味を示さない。
先ほど浮かんだロボットの専門誌というアイデアと、表紙モデルのグラビアアイドル風のポーズが結合した。
――ロボットの写真集。
人工物である彼らの造作が整っているのは当然だ。実際、今までに見たエンケパロスやアントロポスは皆、整った外見をしていた。可愛い我が子やペットに衣装を着せて写真を撮りたくなる気持ちが、彼らの開発に携わる人たちにもわいたとして不思議ではない。
ミルクティーをホットにするかアイスにするかでしばらく迷い、ようやくホットのボタンを押した美麗な青年の横顔を見る。
――ひょっとして……載ってる?
安治は思わずにやけた。タナトスが無関心を装っているのは、中身を知っているからではないのか。澄ました表情の下に居心地の悪さを隠しているのではないか。
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