第317話

 子どもたちは事前に、危険を回避する方法、防具および身を守る武器の取り扱い方、万が一拉致されたり遭難した場合の対処方法などを念入りにレクチャーされる。

 ちなみに前回、時限装置による爆破で自慢の顔にかすり傷を負った琥太朗は、後日自分で開発したカラス型自動攻撃装置で報復を企てて、寺子屋のオーナー一家から説教を食らっていた。

 つまり、寺子屋の子どもが数時間程度の山歩きで疲れるはずはないのだ。

「休憩しないか」

 やっとたま子が呼びかけた声に頷いて琥太朗が立ち止まる。と次の瞬間、崩れ落ちるように地面に膝をついた。

「おい!」

 焦った声を上げてたま子が駆け寄る。一番後ろにいた安治はその日、しばらくぶりに二人の顔を見てぎょっとした。

 たま子の白い肌はまるで花柄になっていた。顔にも首にも、染みのような赤い斑点が浮き出ている。よく見れば肌が露出した部分すべてがそうだ。

 琥太朗はもっと酷い。元の顔がわからないほど腫れて変色している。金髪に近い柔らかな髪の毛も、いつの間にか傷みきってぼさぼさになっていた。

「え? え?」

 初めて事態に気づいた安治は唐突にパニックに陥る。一体何が起きたのだろう。

 琥太朗を抱えて木の根元に座らせたたま子は、しばらく様子を見た後、いくらか苦しそうに呼吸をしながら安治を見た。

「……お前は平気なのか?」

 何を問われたのかわからない。それほど、安治だけ何ともなかった。

「平気って何が? どうしたの、二人とも。歩いてただけだよね?」

 ショックで泣きそうになりながら訊く。

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