【少年漫画編2】再び漫画の世界
第312話
一夜明けて翌日は快晴だった。安治、たま子、琥太朗の三人は日が昇ると同時に辺りを見て歩き、コンテナ車の中をもう一度念入りに調べた。
生きた人間の気配はなかった。他の場所に連絡を取る手段は、バッグに入っていたスマホだけのようだ。しかし連絡を取るべき相手がわからない。
「他の車ってどうなったのかな」
運転席でペットボトルとビスケットの簡単な朝食を取りながら琥太朗が問いかける。
「全員殺された――ってことは、ないように思うんだが」
渋い表情で軽く首を捻りながらたま子が言う。
「うん。さすがにそれはないんじゃない」
安治も同意する。コンテナ車は何台もあった。そこにテロリストが一人二人紛れ込むことはできても、運転手他ファミリー全員が取って代わられたとは考えづらい。
「なら、どこかに行ってるはずだよね」
「車の行き先か……。聞かされてないからな。どこに向かおうとしていたのか」
二人の会話を聞いて安治はスマホを見つめる。唯一有効な通信機器だ。これでどうにか探せないものか……。
琥太朗は安治とは対照的に、険のある眼差しをスマホに向ける。
「それ、壊さない?」
「は?」
予想外の提案に驚く。
「壊すって、なんで?」
「だってそれ、電源入りっぱなしじゃん。マチの端末と同じなら、常にどこかと無線で繋がってるはずだよ。敵に位置を知られる可能性あるじゃん」
「敵、か……」
たま子が恐怖より寂しさを感じさせる声で呟いた。安治は急に焦りを覚える。
「あの、男の仲間が来るかもってこと?」
「来るでしょ。仲間と連絡取れなくなれば、普通」
琥太朗は安治の鈍さに呆れた風だ。
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