第310話

 エレベーターを降り「遊戯室」と表示の出た部屋に入る。

 時刻は深夜一時、予想外に前回来たときよりも人気があった。奥のほうに新しいブースを設置している人たちがいる他、アトラクションを楽しみに来ているらしい人たちがぱらぱらいる。

「ようこそ」

 入り口の近くで声をかけられた。ニットのワンピースを着たきれいなお姉さん――エンケパロスのココちゃんだ。

「あ、どうも」

 覚えられているのだろうかと訝りながら軽く挨拶をする。エンケパロスはにこっと笑って言った。

「前回の続きからなさいますか?」

 覚えているらしい。

「ああ……はい」

 右手で左手首を掴まえたまま答える。

 本当ならタナトスと一緒に来るべきところだ。一人では、勝手に物語を進めてしまっていいのかわからないし、せっかくの機会だから他のブースを試してみてもいい。

 そう理屈が働く一方で、さっさと夢の世界へ逃げ込みたいと訴える本心があった。どうせ無理に眠れば悪夢を見るのだ。だったらまだしも、先が予想できる人工的な冒険に旅立ったほうがいい。

「どうぞこちらへ」

 前回と同じブースに案内される。同じなのは外観だけで、中身は変わっていた。無造作にベンチに腰かける仕様から、個別リクライニングチェアにグレードアップだ。

「へえ、立派な椅子が」

「はい、身体にかかる負担が軽減されました」

 正直、そんなことはどうでもいい。控えめに本題を切り出す。

「あの、つかぬことをお聞きしますけど」

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