第275話

「あの人たち?」

 安治の問いに溜め息をつきながら答えたのはたま子だった。

「冷蔵庫を研究しているチームだ。研究してるんだか、取り憑かれてるんだかは知らないけどな。あいつらは『研究』のために冷蔵庫を見かけたら積極的に開けちまう。だから年に一人二人いなくなる。でもメンバーの数はなぜか減らない」

「え、戻って来れるから?」

「違う。すぐに新しいメンバーが入るんだ」

 頷いて戸田山が後を続ける。

「冷蔵庫チームは基本、他のチームと交流がありません。彼らは人に興味がなくて、常に冷蔵庫のことしか考えてないからです。でもメンバーが減ると、いつの間にか代わりの誰かが入ってるんです。以前僕がいたチームでもありました。それまで普通に働いていたメンバーの一人が急に現れなくなったんです。責任感の強い人だったので不自然に思いましたが、ボスに訊いても転籍したとしか教えてくれません。しばらく経ってから偶然その人を見かけたんです。痩せこけて髪も髭も伸び放題で、覇気はないのに異様な執念だけは感じられて……不気味でした。一応声はかけてみたんですが、譫言のような返事しかなくて会話にならなくて。それで、ああ、冷蔵庫チームに入ったんだなとわかったんです」

 ということは全員そんな感じなのだろうか。

「その人は入りたくて入ったんですか? それとも……」

 嫌な想像をしつつ訊く。戸田山は難しい顔で首を振った。

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