研究室の冷蔵庫
第274話
その日はまずみち子の研究室に顔を出すよう指示があったので行ってみると、案の定冷蔵庫についての注意喚起を受けた。
「まだあんたは見てないと思うけど」
と切り出されたので、投げ遣りに遮る。
「冷蔵庫ならもう三回見ましたよ。一回はエレベーターの中で」
みち子と戸田山の顔色がわかりやすく変わった。ちょうどコーヒーを口に含んだところだったたま子はコーヒーを吹き出す。
「え、本当に? ……開けた?」
「……開けてたらここにいないでしょ」
「え? そんなことないわよ」
「そうなんですか? 開けたら吸い込まれるって……」
言いながらたま子のほうにちらと視線をやる。
みち子はうんうんと頷き「そのパターンもあるわね」と言った。
「パターン? 他にもあるんですか?」
「いろいろあるわよ。吸い込まれたきり戻って来れないっていうのは、そう多くないんじゃないかしら」
「戻って来られるパターンもあるんですか?」
答えようとして口を開けたみち子を、戸田山が「班長」と制した。
「あまり教えないほうが……。興味を持たれたら困りますよ」
やや早口にたま子も同意する。
「そうだな。下手に情報を与えないほうがいいと思う」
二人から言われてみち子は焦ったように口を押さえた。
「そ、そうね、ごめんなさい。……あの人たちみたいになったら困るものね」
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