第223話

 出たところでニットのワンピースを着たきれいなお姉さんが二人にソフトドリンクのカップを差し出してくれた。

「あ、どうも」

 スタイルが良く色っぽい。ひょっとして北条さんの……? と思ったところで紹介された。

「遊戯室アシスタントのココちゃん、エンケパロスだ。操作方法は教えてあるから、俺がいないときでも来て遊べるぞ」

 なんだ、エンケパロスか……と少しがっかりする。美人でもありがたみがない。

「北条さんがいないときにまで来ませんよ。ゲームって言ったって、楽しくないし」

 さながら悪夢だった。

「何だよ、違う人間になれるだけでも楽しいだろ?」

「違う人間――なのかなあ」

 妙に大きな独り言になった。確かに今の『設定』とは違うが、それでも自分であることに変わりはない。たとえ容姿や性格が変わろうとも、自分は自分でしかない気がする。

 それにしても、疲れた。いくらか頭痛がする。あれこれ考えるだけの元気はない。

「まあ、暇になったらまた来いよ」

「はあ……」

 安治とタナトスは曖昧に頷きつつ部屋を出た。

 タナトスも疲れたのだろう。一旦食堂へ行って軽く時間を潰したものの、頭が回らずろくに会話にならないので、早いうちに解散した。

 自室に戻ると、ちょうどおりょうも帰ってきたところだった。

「これからお夕飯作りますから、先にお風呂に入ってください」

 言われるまま湯に浸かったところで、経験した内容がぽつりぽつり思い出されてくる。

 ――琥太朗、大丈夫かな……。

 あんなに小さいのに、家族を亡くして。よほどショックだっただろう――などと考える。

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