第220話

「へえ、こんなに大きいんだね。浮いてるときはもっと小さく――重ッ」

 何気なく一つを手に取った安治はその重量に驚いた。五〇〇グラムくらいあるだろう。これが高速で回転したまま人にぶつかったなら、当然怪我では済まない。

 琥太朗は口を曲げた。

「そうなんだよ。もうちょっと小型・軽量化したいところなんだけど……」

「それが弾丸なのか?」

 初見のたま子が訊く。

「ううん。弾丸と言えば弾丸だけど、発射する装置はないよ。これ自体が動くんだ」

「ハエみたいに動き回るんだけど、見えなかった? 琥太朗の周りを飛んでるの」

「ハエ? ああ、そう言えば……何か見えたな。これだったのか」

「こっちのは電波妨害ジャミングしたり撮影もできるんだ。その分、大きくなっちゃって……」

「撮影もできるのか?」

「今は受像機がないから見れないけどね。音を聞くのはこれ」

 琥太朗はポケットからコードレスイヤホンを取り出して見せた。

「これで会話を聞いてたんだよ」

 口調が重くなったのに気づいて、安治は察する。

「ああ、あの……スタッフの人が誰かと?」

 琥太朗が頷く。

「聞いてても確証は得られなかったんだけど、『気づかれてない』とか『うまくやる』とか、何となく変だったんだ。電話の相手はファミリーの人じゃないと思った。運転席にいる人たちとは無線でやりとりしてたし。そっちとは状況を確認するだけみたいな普通の会話だった」

「盗み聞きしてたのか」

 安治は少し呆れた。助けてくれるはずのスタッフを疑うとは。それも泣いているふりをしながら――実際に泣いてもいたのだろうが――盗聴していたとは。

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