第219話

 無人の車に戻ると、三人はまず使えそうな物資を探して回った。コンテナ内につけられていたライトは電池式で、エンジンがかかっていなくても点灯している。クリップ式で取り外せたので、それを持って探索する。

 封の開いていない非常食、お菓子、飲み物、誰かの上着、ブランケット、救急セット、衛生用品、乗客が置いていったバッグなどが見つかった。これならこのままでも数日はしのげるだろう。

 加えて琥太朗は、スタッフの男が持っていた無線機とウエストバッグを抜かりなく持って来ていた。バッグの中には車のキーもあり、他に小型のアバカスと革製のポーチと手帳が入っていた。

 三人は運転席に必要な荷物を運び込んだ。コンテナより狭く、景色が見えるので、安心感が得られると思ったのだ。そこであり合わせの食事を取りながら他愛ない会話をした。

「――さっき、俺から殺そうとしてたよね」

「お前が一番危険だと思ったんだろうな。でかいしな」

「でも実際、俺が一番弱いよね」

 安治は笑いながら言った。半分本気で、半分冗談のつもりだった。二人は笑っただけで否定しなかった。少し傷ついた。

「これ、音を拾うこともできるんだよ」

 汚れてしまったアイギスを一つ一つ丁寧にウェットタオルで拭きながら琥太朗が言う。

 アイギスは全部で六つあった。うち四つは直径が三センチほど、残りはそれより一回り小さい。外側は硬い金属製のようで、ベーゴマを二つ貼り合わせたような形をしていた。

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