【少年漫画編1】マチを出る
第202話
窓のない装甲車は、火の手が及んでいないマチ外れの空き地に住人たちを運んで行った。そこで一旦下ろされた後、ファミリーによって今度は、速やかにコンテナ車に乗り込むよう指示された。
しかしマチ中の人が続々と集まってくるその空き地では、多少の混乱が生じていた。炎から逃れて人心地ついた人たちが、知り合いや家族を探し始めたためだ。
それまでと違い、とにかくうるさかった。再会して喜びの歓声を上げる人、身近な人を失って泣き叫ぶ人、堪えていた感情を爆発させる人で溢れていた。
探す相手のいない安治たち三人は、しっかりと手を繋いでさっさとコンテナ車を目指した。早く嫌な記憶から遠ざかりたい。
「あ、待って」
ふと気になる顔を見つけて安治が声を上げる。
「芳樹のおばあちゃん」
声をかけた相手は、寺子屋の同窓生である芳樹の祖母だった。女性ははっとした顔をした後、すぐに涙ぐんで視線を逸らした。
安治は嫌な予感を覚えつつも訊いた。
「おばあちゃん。……芳樹は?」
そこにいるのは女性とその息子の二人きりだった。同居していたはずの芳樹一家の姿はない。
首が横に振られた。
「……え?」
ジェスチャーの意味が理解できない。
「……一緒じゃないの?」
助からなかったはずはない。火事が起きて、皆、通りに出てきた。そして避難して救助された。そうではないのか。
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