第194話
出たところで二人は愕然とした。火をつけられたのは一軒だけではなかったのだ。
あちこちから煙が上がっていた。まだ屋根まで燃え上がっている家はない。各家の人たちが水道や街頭の消火栓を使って消火しようと慌てている。
ちょうど騒ぎが大きくなっていくところでもあった。自分の家の異変に気づいた人が、外に出たところで近所にも同じことが起きていると知り、注意喚起の大声を出す。その声に応じて外に出てきた人たちがまた声を出し始める。
この分なら消し止められるだろうか?
淡い希望を感じながら四方を見渡す。しかし見える限り、どこからも煙が上がっていた。数が多い。
これでは……。安治は身体の芯に震えを覚えた。
「何これ……」
同じく琥太朗も青い顔で呟く。
寺子屋に通っている子どもたちは口酸っぱく教わるので擦り込まれている。このマチにとって爆発や火災がどれほど危険か。
マチは密閉されている。空に見えるのも、実は本当の空ではない。空を模した映像を流しているだけのスクリーンだ。
密閉空間で火の手が上がれば酸素がなくなる。
つまり大規模な燃焼が起これば、すべてが燃え尽きなくても、人や動物は死んでしまうのだ。
急に辺りの騒ぎが大きくなった気がした。
「水が出ない!」
ほとんど悲鳴だった。
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