【少年漫画編1】避難

第190話

 やけに白い――それが第一印象だった。

 背が高く、細い。不気味なのが真っ白く長い髪で、腰まであるのを下ろしている。合わせるように白のロングコートに白のロングブーツ。

 顔立ちからは判断しづらいが、体型からして男だろう。

 どこか人形のような、生き物ではないような錯覚を覚える。目が合う。予想しなかったその瞳の色に、安治は心臓が跳ねる気がした。――水色っぽい、明るい灰色の瞳。

 ――死神。

 安治は直感した。背筋がすっと寒くなり、耳の奥で鼓動が速くなる。

 目が合ってしまった。もう逃げられない。根拠もなく確信する。

 きっと家族を殺したのはこいつだ。そして自分もこれに殺されるのだ――。

「――澄子」

 頭は働かないのに、口が勝手に動いた。

「――澄子もあんたが殺したのか?」

 白い男は答えなかった。質問が届いているのかもわからない。

 男は無感情に安治を眺めている。と思うと、口を開いた。

「あなたは何のために生きているのですか?」

 予想外に、穏やかできれいな声。

 しかしこの状況で簡単に答えられる質問ではない。安治は、

「え」

 としか反応できなかった。

 白い男はやや残念そうにした。

 そう認識した次の瞬間、安治は胸に鉄の塊のような熱さを覚えた。

「――――ッ」

 何が起きたのかわからない。わかるのは、数メートル離れた場所にいたはずの男が目の前に移動してきていることと、そのせいで視界が陰ったことだった。

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