第178話

「あ――ヒロインとかいます?」

 思いついたので訊いてみる。すると北条さんも思い出したように「ああ」と言った。

「登場人物はお前たちの記憶から適当に採用されるんだ。ヒロインが登場するかはわからんが、出てくるとすれば実際の彼女の可能性が高い」

「あ、じゃあ――」

「元カノとかな」

「困ります」

 別れたのに、今さら彼女役で登場されても。

「心配するな。話に入っている間は話の中での記憶しかないから、それが元カノだとは気づかないさ」

「ん? ゲームから出たら、ゲーム中の記憶はなくなるんですか?」

「いや、覚えてる」

「……じゃあ、結局わかるじゃないですか」

「まあそうだな」

「あ、あと、どれくらいで終わるんですか?」

「こっちの時間で、二〇分で一回が終わるようになってる」

「それってゲーム内の時間だと?」

「数日か、数年か……」

「長いですよ」

「いいじゃないか、何年経とうがこっちでは二〇分なんだから」

 ――いい、のか?

「で、それが何回ですか?」

「その人によるな。なかなか話を進めない人だと、何時間経っても終わらない」

「その人の性格によるわけですか?」

 ぞっとした。自分の臆病な性格ではなかなか話が進まないのではと心配になる。

「そうだな。観てるこっちもだるいから、さっさと進めてくれ」

「あ、入ってない人にも観れるんですね」

「ああ、録画もできる。面白い話にしてくれよ」

「そうしたいですけど、今言ったことって覚えていられるんですか?」

「冗談だよ。中に入ったら中の人格になりきっちまう。焦らず気長にやってくれ」

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