第175話

「演じるって言うかな、プレイヤーがそのまんま主人公なんだ。舞台と設定は用意されてるから、それに応じてある程度設定は変わることになるがな」

「設定?」

「年齢とか顔とかだな。実際より子どもになるかもしれないし、大人になるかもしれない」

「顔も変わるんですか?」

「顔が変わるというより、周囲の評価が変わる。今のお前はまあ、普通のレベルだろ。それがゲーム内の人間関係では生ゴミみたいな扱いになったり、世界一のハンサムになったりする」

 それはちょっと面白いかも――と単純に思ってから、別の可能性を思う。

「ゲーム内では世界一のイケメンってなったら、現実が余計に辛いでしょうね」

「お? 何だよ。楽しいだろうなって素直に思えないのか?」

「だって、現実には顔は変わらないわけでしょ。落差を感じる分、余計に辛いじゃないですか」

「思い込みが人を変えるんだよ。もしお前が一日中ずっと、会う人すべてにナメクジみたいな顔だって言われたら、自分はそうなんだって思わないか?」

「まあ、思うでしょうね」

「逆に世界一のハンサムって言われ続けたら?」

「……思ったところで、顔は変わらないでしょ」

「ネガティブだな。なんで悪いことは受け入れるのに、良いことは受け入れようとしないんだよ。――あのな、顔は変わらなくたって雰囲気は変わるんだよ。自分はかっこいいんだって思っていれば、自然と態度に出る。な? 髪型や服装にこだわるとか、動作がエレガントになるとか」

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