第174話

 連れて来られたのは「遊戯室」という表示の出た広い部屋だった。照明はやや暗く、アトラクションブースのようなものが並ぶ様は室内アミューズメントパークに見えた。

 人気は少ない。白衣を着た人とつなぎを着た人がまばらにブースのメンテナンスだか何かをしている。

 客らしき姿は見えないが、要はゲームセンターなのだろうかと少し安心したところで北条さんが説明した。

「研究者がそれぞれ開発途中の装置を置いている場所なんだ。来ればおかしな機械で遊べる。だから遊戯室だな」

 開発途中という文言が気になる。それは安全なのだろうか。

「これだ」

 心配する暇もなく、入ってすぐのブースを北条さんは手で示した。円柱形のピンクの壁に囲まれた、大人が三人は入れそうなブースだ。

「何の機械って言いましたっけ?」

「漫画の主人公になれるゲーム、だな」

「ゲーム機なんですか?」

「そう思ってくれて良い。体感型のRPGだ」

「ああ……」

 何となく想像がついた。そういうアトラクションはありそう――。

 一旦納得して違和感に気づく。それなら漫画の主人公という表現はおかしい。

「だったらゲームの主人公ですよね? 漫画じゃなくて」

「違うよ。ゲームの主人公ははっきりした性格づけがされてないだろ、漫画と違って。それにゲームはストーリーが予め決まってる。これは主人公の選択でどんどん展開が変わるんだ、現実と同じように」

「は? ああ、じゃあこれは、漫画の主人公を演じるみたいな?」

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