第134話

 その後、風呂の支度をしている間に調理が終わっていた。思ったより早い。最近の家電は優秀だなと感心する。

 ――味見してみよう。

 期待しつつ蓋を開けた途端、予想以上にいい匂いが広がってさらに期待値が高まった。

「お」

 と思わず声が出てしまう。

 おたまでかき混ぜて小鉢に少量取る。カレールウで作ったときとは色味や質感が少し違う。脂っこさが少ないような。これなら大抵の女性は喜んでくれるだろう。問題は味だ。小鉢に口をつける。

「――うん」

 何度も首を縦に振ってしまう。何のジェシチャーだろう。気づいて恥ずかしくなる。誰も見ていないのに――。いや、シャーリーが見ているか。余計恥ずかしい。

 とにかく味は美味しい。具は小さく切ったせいで溶けて半分ほどになっている。とろりとしたコクのあるルウに肉とニンジンがわずかに浮かび、スパイスの風味が鼻に残る。

 今までに作ったカレーの中で一番美味しいのは確かだ。しかし、食べたことのない味ではない。むしろ慣れた味の部類かもしれない。

 これはまるで――。

「レトルトカレーだ」

 安治は呆然と呟いた。

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