第127話

「電気圧力鍋の内釜を取り出して洗ってください」

 言われるまま洗う。

「野菜を食べやすい大きさに切ってください」

 ――食べやすい大きさ?

「それって具体的には?」

「おおよそ三センチから五センチ角でしょうか」

 ――五センチだと大きいんじゃ。

 とはいえ、好みはある。安治は煮たじゃがいもが好きではないので、なるべく小さく刻んで煮溶かしてしまいたい。反対に、形があるのにかじりつきたいという人もいるだろう。おりょうはどうなのか。

 どうなのかと思っても、いないのだから聞くこともできない。聞けないのだから、とりあえず今回は自分の好みで作るしかない。合わなければ次回から変えるまでだ。

 おりょうがカレーを嫌いだったら?

 可能性はなくはない。しかしそんなことを心配していたら、人に親切にすらできなくなる。おりょうが食べないなら、冷凍保存でもして一人でゆっくり消費すればいい。

 具材はすべて小さめに切ることに決めて、手を動かしながら考える。おりょうは今頃、本社で何をやっているのか――。

 もちろん、想像もつかない。秘書のような仕事というのが机に向かっての事務仕事のようなものなのか、誰かについて回って世話をするような仕事なのかもわからない。常にニコニコしていなければならないのかもしれないし、緊張の絶えない仕事かもしれない。

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