第126話

 ボウルを持ってお米の容器に近づくと、察したらしいシャーリーが軽量の仕方から教えてくれた。いちいち訊かなくても教えてくれるのはありがたい。それだけ注視されているのだと考えると気持ち悪いが。

 さてジャガイモの皮を包丁で剥こうとしたところで、引き出しにあるピーラーを使うよう指示された。それほど不器用だと思われているのだろうか? 期待せずに従って驚く。アパートにあった百均のピーラーと比べものにならない。力を入れなくても滑らかに薄く皮が剥ける。ソトで買えば良い値段がするに違いない。

 鍋を取り出そうとした際にも別の提案をされた。

「電気圧力鍋を使われると楽かもしれません」

「電気圧力鍋?」

「電子レンジの左側にあります」

「……あ、これ?」

 いささか炊飯器に似た家電だった。正直、それも炊飯器なのかと思っていたため、そうと理解するのに時間がかかった。

「え、これは……材料を入れて放っておけば勝手に煮込んでくれる――的な?」

 確かそのような調理器具の存在を聞いたことがある。高いに違いないので自分とは無縁だと決めつけていた。

「その通りです。火を使わないので、つきっきりになる必要がありません」

 ――便利だ。

 ソトにもある道具なのに、つい目が輝いてしまう。今までいた世界がどれほど豊かで、かつ自分がその恩恵に与っていなかったかが身に染みる。

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