再びカレーを作る

第122話

 避難訓練の後、スポーツジム、クライミングジム、球技場、プール、映画館、カラオケ、ビリヤード場、ボウリング場、ゲームカフェ、ダーツカフェ、水族館、遊戯室、工作室をざっと案内してもらい、大食堂で早めの夕食を取って、その日は解散となった。

「居酒屋は建物の外にしかない。いずれ案内してやるが、また今度な。アルコール飲料はクラに行けばある。必要ならもらっていけ。ただし室内はオイコノモスが見てるから、適量を超えると警告が出て、聞かないと上司に報告がいく。飲み過ぎるなよ」

 別れ際にそんな注意を受ける。

「随分厳しいんだね」

「健康のため……というのもあるが、ドクターは基本的にアルコールが嫌いなんだ。飲み過ぎる人間は自己管理のできない役立たずだと思ってる。それで酒好きな人間はどんどん出世コースから外されるから、上層部を占めるのはほとんど酒嫌いだ。研究所以外だとそうでもないんだがな」

「たま子さんはお酒飲む?」

「普段は飲まないが、たまに敷地内の居酒屋へは行く」

「彼氏と?」

 質問の意図を図りかねると言いたげな顔をたま子はした。それでも端的に答える。

「あいつとは部屋でしか会わない」

「研究所の人?」

「いや。本社勤務で忙しいんだ。時間のあるときは向こうから来る」

「本社勤務って、何やってるの?」

「知らん。本社の人間は情報を漏らしたがらない。だからこっちからも訊かない」

「どんな人?」

 たま子は少し考えて、ぶっきらぼうに返した。

「――お前も知ってる奴だ」

 そう言われても、覚えていない。

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