第113話

 たま子は何故か首を傾げつつ「そうだな」と同意した。

「え、何?」

「いや――お前は慣れてるんだろうけどな」

「何に? 通販?」

「通販――か」

 馴染みのない言葉なのだろう。しみじみと噛みしめる様子のたま子。

「……マチだと基本、ものは自分で取りに行くのが普通なんだ。マチにも地区ごとにクラがあって、だいたいいつも同じクラにしか行かない。逆に言えば、自分のところのクラに入ったものしか手に入らないというのに慣れてる。だからわざわざ遠くから取り寄せるということをほとんどしないんだ。そういう発想がないと言ってもいい」

「ああ、宅配がないってこと?」

「ないわけじゃないんだが……。ボクはここに入って初めてそういうシステムを使った。それ以外を知らない」

「ああ、そっか。じゃあこれがたま子さんにとっては普通なんだね。俺の感動はわからない、と」

「ああ、わからない」

 お互いに頷いたときだった。どこかにあるらしい室内スピーカーから突然、不穏なメロディに続いて機械的な音声が流れ始めた。

「中断、中断。これより避難訓練を行います。各自手を止めて、速やかに避難の準備をしてください。繰り返します、これより避難訓練を行います。各自手を止めて、速やかに避難の準備をしてください。二分後に電源が落ちます。落ち着いて、身の周りの安全を確保した上で行動してください――」

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