第111話
「クラは店じゃなくてな、コミュニティ共有の倉庫だと考えればいい。コミュニティに属している人なら、自分の分だけは好きにもらっていいんだ。何故かと言えば、自分はそこのコミュニティで何かしらの役割りを担っているわけだからな」
「でも俺……」
まだ働いてないんだけど、と言いかけて気づく。
記憶が違うのだ。覚えていないだけで昨日までは普通に働いていたのだ、自分は。受け取る権利はあるのだろう。
「クラはいくつかある。置いてるものも微妙に違うから、ここになくても房江に訊いてみろ。別の場所にあるなら教えてくれる」
「情報を共有してるんだ? エン……同士で」
検索機みたいだ――という言葉を飲み込む。当の房江が聞いたら気にするかもしれない――。
そう思ったところで、ロボットの感情を気にするにはおかしなことだろうかと考える。
「あの、房江――ちゃんって、ロボット扱いされるの、嫌がる?」
本人の耳に入らないよう小声で訊く。答える声は普通の大きさだ。
「いや? 別に。ロボット扱いしてるけどな。エンケパロスは旧式だから」
「旧式?」
少し前にもその表現を聞いたような。何の話題だったか。
「とりあえず、あいつらが怒ったって話は聞いたことがないぞ。顔は困ったり怒ったりするが、プログラム上そうなっているだけで、あくまでもポーズだ。そんなに気を遣わなくていい」
気を遣ってしまう自分は変なのだろうか――。安治は余計に考え込む。
人間でないものを人間のように感じて恐れるのはおかしいのだろうか。他の人はそんなことをしないのだろうか。
仮に他の人がそんなことをしないとしても、人間の見た目をしているものを人間扱いしないなんて、自分には怖くてできない――。
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