第106話
「だからみんな外に出ないの?」
「いや? そういうわけじゃない。ここの人たちはみんなマチ育ちだから、普通に家に帰ったり遊びに行ったりはできるさ。大体ファミリーに入る人たちは親ファミリー派の地区出身だから、帰省するのに問題はない。外に出ないのは単純に出る必要がないからだな」
「あ……そうなんだ。地区で分かれるんだね」
「大体な。ほら、村社会だから、コミュニティが強いんだ」
「ああ――」
まだマチを見てはいないが、村社会という表現に何となく合点がいった。
「じゃあ、村八分っていうのもある?」
教科書とネットで覚えた単語をぶつけてみる。たま子は軽く首を傾げた。
「どうだろうな。ボクが育ったのは繁華街に近いマチナカだからそういうのはなかったけど、田舎だとあるかもな。マチナカと田舎は常識が違うって聞くからな」
「都会と田舎があるんだ? 随分広くない?」
「うーん……。広いのは広いんだろうな。山もあるしな」
「マチは狭いって言ってたよ」
「それはだな……人の行動範囲のことだ。ボクが育ったマチナカは人口密集地で何でもあるから、そこで暮らしてる人たちはわざわざ郊外に行く必要がない。郊外は郊外で、集落ごとに畑や狩りで暮らしてる。全体としては広いんだろうが、お互いに行き来がないという意味でだな」
安治は遠足の話を思い出す。
「あの、前言ってたけど、山賊」
牛を連れていると狙われるという――。
「ああ」
「本当にいるの?」
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