第47話

 ただ。

 他人にどう見られるか――。

 は、気になってしまう。

 安治がすぐに気づいたように、他の人も気づくだろう。このマチでの常識は知らない。こういう「女性」がどう扱われているのか、見当もつかない。

 みち子は、安治のほうがおりょうに憧れていたような言い方をしていた。そしておりょうは要人の秘書見習いだと言う。

 どういうカップルに見られるのだろう?

 考えても答えの出ない問いをしばらく追いかける。

 ――そもそも。

 自分はどこに惹かれたのだろうか。

 目線が前を歩く脚に向かう。膝丈のスカートから出た黒いストッキングに包まれた脚は完璧なラインを描いている。ローヒールにつながる細い足首が特にセクシーだ。

 脂肪の少ない腰回りは肉感的とは言えない。でも描く曲線は芸術的で、筋肉の動きがわかる引き締まったヒップは艶めかしい。

 きっと素肌も――。

 不意におりょうの歩みが止まった。気づくのに遅れてぶつかる。身長差のせいで覆い被さるような体勢になる。

「ご、ごめん――」

 慌てつつ照れる安治に反して、おりょうは動じなかった。

「大丈夫ですか。――ここにエレベーターがあります」

 その落ち着き払った様子に、安治はちょっとした違和感を覚える。

 痩せ型とはいえ、上背があるので安治の体重は七〇キロ近い。おりょうは五〇キロもないかもしれない。おまけにパンプスだ。それでいてぶつかった瞬間、おりょうは少しもぐらつかなかった。

 細く見えるのは鍛えているからなのだろうか?

 ――案外、筋肉質だったりして……。

 疑問に思うと同時に、それは遅かれ早かれわかることだという結論が出る。おそらく今日が終わるくらいには……。

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