第24話

 どういう関係なのかと問う前に白衣の女性が言った。

「あんたずっと想い続けて、やっと恋仲になれたっていうのに。こんなタイミングで――」

 言葉の代わりに溜め息が続いた。怒っているのだ、と思ってから、いや悲しんでいるのかも、と思い直す。同情してくれているのか。

「こんなタイミング……?」

「昨日、やっと付き合えたんでしょ」

「昨日――」

 それは確かに微妙なタイミングだ。おりょうは心なし、はにかんだ表情を浮かべている。『付き合う』の意味を察する。

 彼女からすると、望まれて付き合い始めたと思ったら一転「あんた誰?」と言われてしまったわけだ。急激な心変わりだと勘違いされても仕方ない。

 ――想い続けていた?

 ぴんとは来ないが、何となく得心はいく。自分はこういう、守ってあげたくなるタイプが好みなんだな、と他人事のように思う。過去に付き合った女性はむしろ気の強いタイプが多かったが。

「それで――」

 と白衣の女性に水を向ける。

「みち子よ」

 と返された。

 ――みち子。

 安治は内心で首を傾げる。普通、名字かフルネームを名乗らないか。名前だけとは。それほど親しい間柄なのだろうか。

 みち子女史はかまわず

「こっちは戸田山。と、所長」

 と手で示した。戸田山は眼鏡の男性、所長は中年のほうだ。

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