第19話
女性はキッチンに行くと、水を一杯持ってきてくれた。隣に座り、気遣わしげに安治を見る。
礼を言って水を受け取りながら、安治は一つの重大な――おそらく――ことに気がついた。
リビングは明るい。ベッドルームで見たときには気づかなかったが……この美人は、女性ではない。
いや、女性と呼ぶべきなのだろうか。
顔も手も脚も髪も、本当にきれいだ。安治が今までに出会った女性の誰よりきれいかもしれない。
ただ――多分、どうやら、生まれつきの女性ではない。骨格というか、肉づきというかが微妙に違う。初めて見たときに感じた違和感はそのせいだったのかも、と今になって思う。
だからどうということもないのだが、今までとは違う動揺を覚えた。聞いて確認したい衝動に駆られる。しかしどう聞けば。
――名前。
結局まだ名前を聞けていない。何というのだろう。ケンタロウとかダイスケとかでは――ちょっと嫌だ。
「ライキャクデス」
天井の辺りで機械の合成音がしゃべった。
「うわっ」
思わずのけ反った安治を、女性が心配そうに見遣る。
「――待っててくださいね」
そう言うと立ち上がり、玄関に向かった。開いたドアの向こうに白衣を着た人の姿がある。一人ではなさそうだ。
女性は簡単に事情を説明したようだった。一分もかからず、白衣の人たちが入ってくる。
何か大ごとになっている――。安治は身を固くした。
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