第13話
ふと自分の着ているものに気がついた。紺色の薄手のパジャマだ。まだ新しい。
これも記憶にない。寝るときはいつも肌着か着古したスウェットだった。パジャマなんて着るのは実家にいた頃以来だろう。
どうしていいかわからず、固まってしまう。物音を立てるのが怖くて、ベッドから降りることすらできない。
そのうちに足音がこちらに近づいてくるのがわかった。人影が視界に入る。すらりとした若い女性だ。
安治はただ見つめた。それ以外に何も行動が思い浮かばなかった。
女性はおそらく安治を認めた。そして叫ぶでもなく落ち着いた様子で、明確な意図を持って近づいてくる。
その顔に目が吸い寄せられる。
一瞬見覚えがあるように感じたのは、ただの錯覚だろう。ほんの少し、姉の
似ていると感じたのは、女性にしては背が高く肉づきが薄い体型と、長い髪、細面に切れ長の瞳、細い鼻筋、薄い唇が共通していたからだろうか。
共通はしている。しかし、別人だ。安治はその差異をじっと見た。
やはり澄子ではない。洗練度がまったく違う。木炭とダイアモンドくらい違う。澄子が田舎の純朴な娘なら、この女性は一流のモデルかアイドルだ。
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