目覚め

第11話

 眠りから覚めた。頭まで被った毛布の隙間から明るさを感じた。

 朝だ。

 目を瞑ったまま寝返りを打つ。きっとまだ早い。もう少しごろごろしていても問題はないはず。

 音が聞こえる。軽く床を叩くようなパタパタいう音と、魚焼きグリルを閉じるようなガチャンという音――。

 ――何の音だ?

 安治あんじはぼんやり思った。隣家の生活音が聞こえているのだろうか。いつもそんなことはなかったように思うけれど。

 反対に最近、毎朝聞こえていたスズメやカラスなんかの鳴き声が聞こえない。

 ――ひょっとして、もうお昼?

 寝過ぎたのだろうか。そういえば差し込む光の感じがいつもと違う気がする。

 手が枕に触れた。やけにつるんとしている。

 ――うん?

 安治は枕に頭を着けたまま目を開けた。やはりつるんとしたシルクのような布が目に入った。洗って間もないような柔軟剤の香りがする。

 ――なんだ、この布。どっから……。

 頭を持ち上げて再度枕を見る。――薄紫のシルクの枕カバーが着いていた。

 ――……あれ?

 瞬間的に悟る。ここは自分の家ではない。

 安治はいつも枕にはタオルをかけて使っている。いちいちカバーを着けたり外したりする手間を省くためだ。柔軟剤は使っていない。

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