白い夢
第7話
夢を見た。
夢だと思う。
気づいたら、何もない空間にいた。
白い。
白という色があるのか、夥しい光に隠されて何も見えないので白いと感じるのかはわからない。
とにかく真っ白で何もないように見える空間にいた。
振り返って四方を見た――と思う。
いかんせん景色がないので、実際に振り向いたのかどうかわからない。ただ自分ではそう動いたつもりだった。
――何もないな。
そう思った。
「やあ」
不意にはっきりした声が耳に届いた。驚いて振り向く。
一〇メートルほどだろうか、遠いような近いような距離に人が座っていた。さきほどまで何もなかったはずのところに、アンティーク調の赤い革張りの椅子が現れている。
それに座っているのは、なんだかメークインのようにつるんとした顔の小柄な男性だ。古めかしいのか高級なのか、どこかレトロな感じのスーツを着ている。スーツではなく背広と呼ぶべきだろうか。短い髪は柔らかそうで、年齢はわからないものの童顔という印象を受ける。
顔と服装がややアンバランスだ。何歳だろう。十代かもしれないし、三十代かもしれない。
その童顔の紳士は丸眼鏡をかけて、孫を見る祖父のごとく柔らかな表情で安治を見ていた。
見覚えはない。けれど妙な親近感がわいた。ひょっとして子どもの頃に会った親戚か何かだろうか。
「知り合い――」
ですか、と訊こうとして、向こうの声と重なった。
「知り合いのおじさんです」
おかしな自己紹介だった。
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