第6話
あった。入っている数は少ないけど安い。これだとにんじんとのバランスは悪くなるけどかまわない。炭水化物はご飯で摂るからいいのだ。
安治はフライドポテト以外のじゃがいもがあまり好きではない。かといってじゃがいも抜きのカレーを作ったら、やけにシャバシャバになってしまった。どうやらとろみをつけるために必要らしい。
やっぱりこっちで買おう、と手に取ってから気づいた。細長い形……これはメークインじゃないか。
――あれ、さっきのは何だった?
品種までは気にしていなかった。男爵に限定して見てみれば、さっきの店のほうが安いという可能性も……しかしまた戻るのか?
戻ろうかどうしようか悩み、そんな自分が馬鹿馬鹿しくなって、結局その店で買い物を済ませた。
家に帰り、小一時間かけてカレーを作る。出来上がったところでご飯を炊き忘れているのに気がついた。
ひどく落ち込んだ。
単に忘れていたのではない。最初に挽肉を買って家に帰る途中、帰ったらご飯を炊かなきゃ、と思っていた。それですっかり、炊いたつもりになっていたのだ。
あると思っていたものがなかった。それは単に転倒するのではなく、段差を踏み外して転げ落ちるのと同じくらいの衝撃だ。
なんて駄目な自分――。
これだから、と顔をしかめた母親のイメージがここぞと責め立てる。
――何やらせたって中途半端なんだから。
安治はカレーを諦めた。
いや、「一晩寝かせる」んだ、と自分に言い訳して、具なしのインスタントラーメンをその日の夕食にした。
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