幕間─新たなる影

──数時間前

 

「らっしゃいせー!今日はマグロが安いよー!」

 

「本日全品5%オフでーす!」

 

 掛け声が飛び交い、賑わい溢れる商店街。今時ここまで繁盛している所は少ないだろう。お昼時のこの時間にはスーツ姿の人が昼食求めて店に入る姿がよく見られる。しかし、同じくスーツに身を包む私は総菜屋の前にいた。

 

「すいません、チキンカツ一つお願いします」

 

「あいよ〜、チキンカツね。ちょいと待ちな」

 

 普段とても忙しいが、旨そうな揚げ物の匂いは今の時間に効く。私はついチキンカツを買ってしまった。

 

「100円ね。仕事の合間かい兄ちゃん」

 

「はい。これからもっと忙しくなるので軽く」

 

「そうなんかい、頑張なさいねぇ。はいこれ」

 

「ありがとうございます」と100円を引き換えにチキンカツ受け取る。一口頬張ると、チキンカツが持つ旨味が口の中に広がっていく。肉は柔らかく、熱々なのが旨味を助長している。これ一つで私の小腹を満たしたことは言うまでもない。

 

「久しぶりに旨いもん食ったな」

 

 満足感溢れるその時、携帯に着信が入った。電話の主は私の上司であった。

 

「もしもし、私だ」

 

「お疲れ様です、長官」

 

「どうだ、長旅の疲れはないか」

 

「ぼちぼちです。旨い総菜屋もありましたし」

 

 軽口を叩きつつも長官の出方を伺う。

 

「そうか、喜べお前の仕事を伝えるぞ」

 

「わざわざこんな辺境まで行かせるとはどんな仕事ですか」

 

「とある学校に調査に行ってもらう」

 

 そう言ってタブレット端末に資料が送られてきた。

 

「学校……ですか? また突拍子もない」

 

「まあそこにいる人物に用があるのだが」

 

 疑問点がいくつか残るが、添付された資料を開く。それを見て、私は全て納得した。

 

「あぁ、なるほど」

 

「やっと理解してくれたか。まあそういう事だから報告書はいつも通りよろしく」

 

 そこに書いてあったのは私達の同僚の名ともう一つ、『花栄工業高等専門学校』という文字列だった。

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