【番外編】《チューダー朝ヘンリー7世の家系図》から
※近況ノートにおいて、「ヘンリー7世の家系図」を載せ、書かせていただきましたが、その文面の部分だけをこちらにも掲載させていただきます。
こちら「近況ノート」と全く同じ文面であり、ただ「近況ノート」では挿入できた「ヘンリー7世の家系図」の図は掲載できませんでしたので、ヘンリー7世の家系図を見たい方はどうか「近況ノート」の方を御覧くださいませ。よろしくお願い致します。
【第3章】に入る前に、家系図なしではわかりにくかったチューダー朝ヘンリー7世の家系図を作成し、今一度色々なことを整理しようと思いました。
さて、この家系図を見ると彼が王位にそれほど近い位置にあったとは言えないことがおわかりいただけるかと思います。
確かにヘンリー7世の曽祖父はジョン・ボーフォートでヘンリー4世の偉大なる父ランカスター公ジョン・オブ・ゴーントの息子だったものの、ジョン・ボーフォートの母はジョン・オブ・ゴーントの愛人だった3番目の妻キャサリン・スウィンフォードで、ジョン・ボーフォート兄弟達(そこにはセシリー・ネヴィルの母ジョウンも含まれる)は庶子扱いされるところを、ジョン・オブ・ゴーントの権力でなんとか嫡出子と認められたという経緯がありました。
母方の家系がそうであれば、では父方の家系はどうかと言えば、父エドムンド・チューダーは確かにヘンリー6世の兄弟ではありましたが、でもヘンリー5世の血が入った異母兄弟ではなく、なんとプランタジネット家(あるいはランカスター家)の血は全く流れていない異父兄弟でした。
エドムンドは元王妃(例のフランスの父王だったシャルル6世の狂気の血が流れていた)キャサリン・オブ・ヴァロアと、騎士オーウェン・チューダーとの間にできた子供でした。
この2人の関係は、ヘンリー5世が若くして亡くなった後に始まったもので、不倫のようなものではなく、概ね宮廷内で認められ、事実婚となったわけで、子供であったエドムンド・チューダーも少なくとも庶子扱いされることはなかったようですが、それでも薔薇戦争において最終的に王位を手に入れたのが、プランタジネット家の血筋から割合離れていると感じられる、ヘンリー7世のものになったという史実に驚きを隠せませんでした。
やはりなんと言っても一応はヘンリー6世の弟の家系であったことと、祖母はフランス王家の姫で、元イングランド王妃という地位が彼を守ったのでしょう。
ただもっと調べると、このチューダー家なのですが、200年近くの前を辿れば、ウェールズ大公の傍流家でした。ウェールズ大公とはイングランド王エドワード1世に征服される以前のウェールズに存在した君主で、13世紀にウェールズのほぼ全域を支配し、ウェールズ大公のこの称号「プリンス・オブ・ウェールズ」というある時から皇太子を意味するようになったこの称号は彼から来ました。
しかしこの大公家は13世紀終わりに、エドワード1世によって滅亡するのですが、傍流だったチューダー家はなんとか生き延びていたのでした。
そしてこのウェールズ大公家を滅ぼしたエドワード1世とは、当時のプランタジネット家当主にして、後のエドワード3世のお祖父様、つまり今回も何度も出てくるランカスター公ジョン・オブ・ゴーントの曽祖父に当たる方なのです。
かくしてイングランド王家はプランタジネット朝の
プランタジネット家は、1152年のヘンリー2世に始まり
エドワード1世→エドワード2世→エドワード3世
ランカスター家
ヘンリー4世→ヘンリー5世→ヘンリー6世
ヨーク家
エドワード4世→エドワード5世(戴冠式なしで76日間の在位)→リチャード3世
プランタジネット朝はここで終わり
そしてチューダー朝
チューダー家
ヘンリー7世→ヘンリー8世→エドワード6世→ジェーン・グレイ(戴冠式準備中の9日間の在位)→メアリー1世→エリザベス1世
……と、このように王位はプランタジネット朝からチューダー朝へと移っていき、チューダー家の本家であったウェールズ大公家のウェールズ国王だったリース・アプ・グリフィズは墓場の影できっとさぞや喜んでいたことでしょうね。
約200年前のプランタジネット家の行いが、忘れた頃にまるで違う形で、でもブーメランのように返って来たような結果となり---そして、これが最終的な薔薇戦争の結末なのでした。
チューダー家出身のヘンリー7世はプランタジネット家をどこかで恨んでいたのかもしれませんね。
しかし彼もそのプランタジネット朝ヨーク家の姫(エドワード4世の娘)エリザベス・オブ・ヨークと婚姻を結ぶことによって、なんとかプランタジネット家の血はその後のヘンリー8世やエリザベス1世へと少なからず続いていったのでした。
歴史というのは本当に興味深いですよね。
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