第53話 美姫か獣か
「ちょ……何を言っているのですか、レンカ!?」
レンカの突然のカミングアウトを受けて、ミリーシアが勢い良く立ち上がった。
信頼していた女騎士。自分の護衛である彼女が男に縋りついて「ムチャクチャにしてくれ」などと淫乱なことを言い出したのだから当然である。
「も、申し訳ございません……姫様。太守の屋敷に囚われていたころからずっと我慢していて、もう限界なのです……!」
レンカは主人に謝罪すると、涙に潤んだ瞳をカイムに向けてきて訴える。
「カイム殿……お願いだから、今すぐにでも私のことを犯してくれ! 物のように、奴隷のように乱暴にして欲しい! 私は貴殿に蹂躙されたくて仕方がないのだ!」
「お……おおう……!?」
カイムが激しく動揺してたじろいだ。
牢屋でレンカを助けたときから、彼女が特殊な性癖を抱いていることは予想していた。予想していたのだが……真面目な女騎士がここまでストレートに欲望をぶつけてくるとは思ってもみないことである。
どうにかして動揺した心を静めようと、カイムは迫ってくる裸のレンカから顔をそむけた。
「がうっ、ズルいですの! ティーだって我慢していたのに、レンカさんばっかり抜け駆けしないで欲しいですわ!」
しかし、そんなカイムにさらに追い打ちが浴びせられる。裸で迫るレンカを見たティーが対抗心を燃やし、服を脱ぎだしたのだ。
銀髪の虎人であるメイドが小気味よく服を脱いでいく。カイムが買ってあげたばかりの赤い下着姿になると、ずずいっとカイムに詰め寄った。
「ティーのこともいっぱい抱いて欲しいですの! 今日は後ろも好きにしていいですわ!」
「お前も何を言ってんだ!? 状況を考えろ、状況を!」
驚天動地の連続にカイムも本格的に焦りだす。
ミリーシアが皇女であることが判明して、町の太守によって追われる身となり……森に潜伏して追っ手を撒いている最中だというのに、どうして自分は女性二人に迫られているのだろうか?
カイムは助けを求めるようにこの場にいる最後の人間。ミリーシアに目を向けるが……美貌の皇女はスクッと立ち上がってプルプルと拳を震わせている。
「二人とも……いい加減にしなさい!」
「そ、そうだぞ! ミリーシアの言う通りだ!」
「私だってカイムさんとセックスがしたいのですよ!? 私だけ除け者にするなど許せません!」
「ああ、そうかよ! 薄々そんなことになるんじゃないかと思ってたよ!!」
カイムは頭を抱えて絶望の叫びを上げる。
二度あることは三度あるという言葉あるように、レンカとティーが発情しだした時からこうなるのではないかと思っていた。
「太守の屋敷から助けていただいた時から、ずっと胸の高鳴りが止まらなかったのです。惚れた……いいえ、惚れ直したというべきでしょう。私が添い遂げるべき相手がカイムさんであると改めて確信いたしました!」
ミリーシアは「負けてたまるか!」とばかりに着ていたドレスを脱ぎ捨てて下着になる。
夜の森にまぶしい純白の下着姿の美女が出現した。
すでにカイムに迫っている二人に交じり、柔らかな肢体を押し付けてくる。
「さあ、押し倒してくれ! お尻を叩いたりしてくれるとすごく嬉しいぞ!」
「ティーがいっぱいご奉仕しますわ。とりあえず……ズボンを脱ぎましょうか」
「帝国皇女である私をこんな嫌らしい女にしたのです。もちろん、責任は取っていただけますよね?」
「…………」
三者三様。肌色多めの姿になった三人の美女が迫ってくる。
こうなってしまうと、カイムにはもはや抵抗の手段はない。求められるがままに欲望の波に身をゆだねるしかなかった。
(責任……か。多分、これも俺の毒が原因なんだろうな……)
擁護するわけではないが……レンカとティー、ミリーシアも本来はこんな節操なく迫る淫乱女ではないはず。
彼女達が状況を忘れて求めてくるのは、『毒の王』であるカイムの体液を摂取しているからに違いない。
ファウストが解説していたが……カイムの体液には強い催淫効果がある。おそらく、依存性も。
三人はそれぞれ体液を摂取したことでカイムの虜になっており、さらに窮地を救われたり夜のデートを楽しんだりしたことがきっかけとなり、体内に残っている『毒』が刺激されて発情状態となってしまったのだ。
(コイツらはもう俺から離れられない。狙ってやったことではないが……それでも、キチンと責任を取らなくちゃいけないんだろうな)
カイムは降参するように溜息をついて両手を挙げる。
何だかんだと言ったところで、カイムも結局は三人に好意を抱いているのだ。
距離を取って『毒』が抜けるのを待てば魅了も解けるかもしれないが……今さら、三人を捨てることなど考えられなかった。
「……良いだろう。俺も男だ。腹を括って全部ぜんぶ受け止めてやる!」
カイムは叫び、クワッとかみつくように言い放つ。
「好きにしやがれ!」
その後……カイムは宣言したとおり、好きにされることになった。
徒党を組んで襲いかかってくる女三人は、まるで群れで狩りをする雌獅子のよう。カイムはろくに抵抗することもできずにひたすら搾り取られることになる。
一晩中、絶えず求められたカイムは若干、女性恐怖症に陥ることになるのだが……それはまた別の話であった。
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