バベルの話
◆ご挨拶
こんにちわ、だいなしキツネです。
キツネは評論一辺倒のけものではなく、主に戯曲を書いてきたけものだよ。でも演劇活動に一区切りつけたのを機に、小説を書いてみようと計画中なんだ。
ここでは、構想中の作品を一つ紹介するよ。
◆バベルの話
バベルの塔の崩壊直後、混乱する社会の隙間を縫って、崩壊した塔を登っていく話。
バベルの塔の伝説は、聖書に描かれているものが有名だけれど、その起源は古代バヒロニアの伝承にまで遡るとされている。人類の限界を定めるとともに言語の起源を問うものだから、題材としては面白いなと思ったんだ。
バベルの塔の伝説は、主に二つの要素からなる。
① 人類は、天にも届く塔を築こうとして神の不興を買った。
② 神は、民族と言語が一つしかないからこのような事態が生じるのだと考え、人々の言語を乱した。結果として人類は複数の民族と言語に分かれた。
このうち①は、なぜ塔が天に届くと神の不興を買うのかが問題となる。これに対してはヨセフス『ユダヤ古代誌』の解釈が有名だね。塔建設の動機が、大洪水の被害について神に復讐するためだったので、それに対応したという説だ。あるいは、神の意思とは無関係に、ただそれが世界の構造であったという想像が、テッド・チャン「バビロンの塔」によって描かれている。
②は、なぜ人類が多様な言語を持つのかを説明しようというものだ。言語によって世界観が異なるという事実は古くから指摘されている。また、多様な言語がせめぎ合い、その境界を越える瞬間に新たな文化が創造されるという見解もある(スタイナー『脱領域の知性』など)。そうしてみると、言語の多様性は人間社会の多様性の起点に他ならない。民族的な対立、政治的な摩擦もここから生じる。人類が初めて経験する文化的・政治的衝突を描くのに適した題材だといえそうだ。
◆登場人物
主人公は、この世界でただひとり、誰とも言語を共有していない人物。神の攪乱によって言語は分かたれたけれど、それは人類を複数の集団に分けることを意味していた。しかし、主人公だけはどの集団にも属していない。彼の言語を用いる民族は存在しないから。
とはいえ、誰とも意思疎通ができないというわけではなく、ノンバーバルなコミュニケーションを通じて少しずつ相手の言語を学ぶことによって、対話は可能となる。
主人公の内的言語は誰とも共有されないけれど、主人公自身は相手の言語を修得できるということ。
この修得対象は、驚くべきことに、人間相手とは限らなかった。主人公は行き倒れのアライグマを介抱する。そのうちに、アライグマの言語を話せるようになった。アライグマは主人公の無二の相棒となって旅に同伴する。
主人公の旅の目的は、バベルの塔の頂上に、《何か》を返しに行くこと。それは、主人公だけが誰とも言語を共有していないことと関わりがあるのかもしれない。そして、アライグマはそのことに不吉な予感を抱いている。
◆舞台
主人公は、様々な民族と交渉し、それぞれの文化の恩恵を受けながら塔の頂上を目指す。民族間の対立もあれば、主人公への反対勢力もある。神による言語攪乱直後の時代であり、人々の間には困惑と高揚感が満ちている。主人公は、人類の文明が一つの終焉を迎え、新たな文化が花開こうとするその現場に居合わせているのだ。
崩壊したバベルの塔を登るのは困難極まりない。バベルの塔はあまりにも巨大な建築物であったため、その中には今や複数の社会が雑居している。下層から中層にかけては政治的対立の場である。そこは最も神に近い場所であり、かつての権威の象徴であったから。人類はまだ塔から退去しきっていないのだ。上層に登るには、現地の人々の協力が不可欠となる。
バベルの塔は上層に登るに連れて自然の法則を失っていく。そこは天使や神の独自の秩序に則っている。人間には、その秩序を理解すること自体が冒険となる。この領域には常識外れの品々が埋蔵されているため、一部の命知らずな狩猟者が跋扈する危険な地帯でもある。
◆転機
バベルの塔を登る途中で、主人公は、不思議な珠を見つける。そこには赤子が封じられていた。それは主人公にとって思いがけない出会いとなり……
以上が中盤まで。赤子の予兆は序盤から散りばめたいなと思っているよ。
◆一体いつに…?
この作品を一体いつ書き始めるのかはキツネにも分からないよ。もう2年くらい前から構想しているのに、調べ物ばかりしているからね。しかも他の作品と並行して検討しているので、遅々として進まないよ。WEB連載向きかというとそれもまた疑問だね。
でも生きているうちに書き上げたいなとは思うんだ。
この作品の参考になりそうな文献があれば、ぜひ教えてくださいね。
それでは今日のところはご機嫌よう。
また会いに来てね!
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