No.22 皆さんと街を行進です!


一行は城下町に入る、見える城まで真っすぐ進む魔王達。


「さあ!この方たちは二人の統治者を倒したお方だ!こんな生活とおさらばしたいって奴は協力してくれ!!」


兵士たちが先導してそう言いながら街中を進む。


どうやら他の獣人の兵士たちも現在の統治に不満が募っていたようだ。

彼らの進行を止めるどころか、すぐに協力してくれた。


気付けばかなりの数の人間がアギ―達について来ていた。


「なんか行進みてぇになったな」

「なんだ?貴様のいう行進はこの程度にしかならんのか?」

後ろを振り向いていたフラマーラにグレイシモンドがそう言う。


「はぁ?!ふざけんな!比べものになんねぇよ。今度見せてやろうか!?」

「だとしても我の美しく厳かな軍隊には到底及ばないだろうがな」

「ちょっと二人とも喧嘩やめてくださいよー」



城下町に進む。


すると兵士たちが現れる。


「お前ら一体何者……って何してんだ!どういうつもりだこれは!」

魔王達の後ろに兵士たちがいるのに気付く。


「俺らはもうアイツの支配にうんざり何だよ!そうだろ!いつ自分たちが食われるかも分からないようなさぁ!お前らは違うのか?!」


蛇の獣人の兵士がそう言うと相手の兵士たちが一瞬黙る。


これをみたアギ―は彼らが強い恐怖によって縛られている事を感じ取った。


「それでも!そんなどこのどいつかも知らない奴らの肩持つなんてどうかしてるぞ!正気じゃない!」

鳥の獣人兵がそう言うと、相手の兵士たちは武器を構え直す。


「じゃあお前らは、あんな奴の元にずっといるのが正気だっていうのかよ!」


「うるせぇ!!今日一日生き延びようって思う事の何が悪いんだ!」

双方の意見はぶつかるばかりだ。


「しょうがねぇ、ここは俺たちに任せて下さい。お嬢さん方は先へ」


魔王達の後ろにいた兵士が前に出て武器を構える。

相手方に向けているその剣や槍は微かに震えていた。


「うおおお!!!」

「お前らアアァ!」

対峙した兵士たちの武器がぶつかる。


「さあ、どうぞ!今のうちに!!」


魔王達は兵士たちを飛び越えた。


「ほら、アギ―も行くぞ」

残るはテネバイサスとアギ―だけ。


「な、なんで闘わないといけないんですか。みんな、あんなに戦いたくない顔をされてるのに……」

「ああ、だからこそ早くここを突破しよう」

テネバイサスがアギ―を連れて行こうとするとアギ―が前に出た。

下を向いて自身の服をギュっと掴んでいる。


「やっぱり……そんなの嫌です!」

アギ―がそう声を上げると兵士たちがいた床から植物が生え始め、両陣営を一歩退かせた。


「な、なんだこれは!?」

「いきなり木が生えて来たぞ!?」


「お、お嬢さんがやったのか……?」

蛇の獣人兵士が振り向く。


「皆さん同士で戦うのはやっぱりダメだと思います……だから、その……今度戦おうとしたら皆さんメッってしますからね!!」


怒り慣れない彼女の必死の言葉に思わずテネバイサスが吹き出す。


「だってよ、お前らまだやる気か?あのお嬢さんですらこんなすげぇ事出来るんだぞ。それでもアイツの下にいた方が安全ってか?」


床から生えて来た樹木の隙間から相手兵士を覗き込みそう言う蛇の獣人。


「うう……分かった、分かったよ。冷静に考えれば生き延びるためにはアンタらと戦うのは一番避けた方が良いだろう。それにあんな優しい子が何かを成し遂げようとしてるんだ、それを邪魔するなんて生き恥だよな」


そう言って鳥の獣人兵が武器を下げる。それを見て他の兵士たちも武器を下げ、道を開けた。


「皆さんありがとうございます!」

アギ―は頭を下げて兵士たちが作った道を進んだ。

テネバイサスもついていく。


「アギ―、今度はもっとカッコイイセリフ用意しとけよな。『メッ』はねぇだろ、しまんねぇ。ああいう時は『ぶっ飛ばす』で良いんだよ」


やってきたアギ―に腕をかけてフラマーラがニヤリと笑いながら助言する。


「ええー。わ、分かりました。今度使ってみます」




アギ―達は統治者がいる城の前まで来た。

黒いレンガ造りで、城というよりは要塞のように無骨なデザインだ。

真っ黒な靄が周囲を漂っている。


城の周りは至る所に沼があり、なにやらジメジメしている。


「なんか見るからに辛気臭い所だな。これは闇の力の影響か?」

「失礼な、俺の力のせいではない。イビルハンガーとか言う奴の性格が出ているんだ。だから見てみろ、俺はこんなにも明朗快活だろ?」


少し不機嫌そうに言ってフラマーラの方をみるテネバイサス。


「いや、分かんねぇよ」

手を振って否定するフラマーラ。


「だが気を付けろ、沼から急に敵が出てきて体を引き裂かれるかもしれない」

「ええ!怖い!」

「大丈夫よーダーリンの冗談だから」


やはりどこか闇深なテネバイサス。


城の門をくぐって中に入るとそこには鎧甲冑を身に着けた者達が並んでいた。


「お、あれが幹部か?確かに多少は雰囲気あるじゃねぇか」

「ほお、黒い鎧か、中々良い趣向をしているではないか」

「私はもっとキラキラしてた方が好みだわ」

「人の力で好き放題してくれるな」


頭部までしっかりと装備をしているので、表情は伺えないが相手は魔王達に動じている様子はない。


「お、おい!やめておけよお前ら!この人たちはお前らが束になっても足元にも及ばねぇぞ!俺たちと一緒にこいよ!」


魔王達と幹部たちの間に兵士たちが割って入って来た。


「……」


「無駄だ、そいつらは何かされている」

テネバイサスが兵士たちにそう言う。


「え?」

「連中の体内から魔力を感じる、そして頭部にも。恐らくいう事を聞かせるために魔力で頭の中でもいじっているのか」


すると幹部たちが襲い掛かって来た。


「来たか……」

「やるっきゃねぇな」


魔王達が構える。


「待ってください!!」

しかし、兵士たちがその攻撃を受け止めた。


「何してんだ」

「邪魔するなと言ったはずだが」


フラマーラとテネバイサスが兵士たちにそう言った、もし彼女たちが攻撃していたら味方の兵士たちも巻き込まれていただろう。


「こいつらは、例えアイツに操られていたとしても大事な同胞たちなんです!」

「だから殺さないで貰えますか!?」


そう言っている彼らだが明らかに押されている。


「調子が狂う。アギ―頼めるか?」

「分かりましたやってみます!兵士様たちは下がってください!」


テネバイサスに頼まれてアギ―は頷く。


彼女はポケットから種を取り出して幹部たちに投げる。

種が幹部たちに触れるとあっという間に幹部たちを拘束する程に成長。


「これで皆さん傷つかずに済みますね!」



「ありがとうございます!こいつらは邪魔にならないように、俺たちが城の外まで運んでおくんで。皆さんは思う存分暴れちゃってください!」


幹部たちを外に運び出すために兵士たちをそこに残しアギ―達は城の奥へと進む。


そこにこの城の主であり資源力の統治者であるイビルハンガーの部屋があった。

重厚な扉、仕掛けでも利用しないと常人では開けられない程だ。


「よっと」

フラマーラがその扉を蹴って爆破する。


「騒がしいなあぁ、飯の時間なのにまだ飯が来ないしいぃ、どうなってんだあぁ?」


暗く良く見えない部屋の奥から声が。

声の響き方からかなり広い部屋だという事が分かる。


紫色に揺らめく松明に照らされた部屋の奥にはイビルハンガーがいた。

彼が乗る椅子か台座のようなものは彼の重さでたゆみ、悲鳴を上げている。


「貴様がイビルハンガーだな」

テネバイサスがそう言うとゴソゴソとイビルハンガーが何かを取り出す。


「ああ、このパウダーはうめぇな。手にかけて食べちまお」

取り出した白い粉を腕にふりかけその腕に噛みつくイビルハンガー。


「うげぇ、自分の腕食ってるよあのデブ」

「なんと醜い……吐き気がするな」

「激引きねぇ~」

他の魔王達はイビルハンガーの行動に顔をしかめる。


「んあ?なんだお前らあぁ?そうか役立たずどもめ」

気怠そうに話すイビルハンガーは魔王達を見下ろしてそう言う。


「まあいいか、お前らを喰って、その後は役立たずのクズどもだ。クズでも多少の腹の足しにはなるだろ」

徐々にその気怠そうな話方が変わる。


「よーし、それじゃあさっさとこのくせぇゴミ処分しちまうか」

「ああ、このような奴の顔を見る時間は一瞬でも短い方が絶対的に良い」

「センスが合う合わない以前の話ねぇ」

「行くぞ」


魔王達が並び構えた。


「ふん、貴様らの相手なんておれがする訳ないだろうが」


そう言ってイビルハンガーは手を上げる。


「来い!異界の破壊者よ!!」

彼の手が紫の光を放つ。


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