No.23 最初から深淵の破壊者さんが登場!?でもやってみます!
イビルハンガーと対峙したアギ―達。
「来い!異界の破壊者よ!」
そう言って手から光を放つイビルハンガー。
「えええ!いきなりですかああああ!?」
相手の発言にアギ―が驚く。
直後イビルハンガーの背後にある壁を破壊して巨大で黒い蛇が何匹も部屋の中に侵入してきた。
「複数体?いや違うな。今までのを考えれば恐らくは」
グレイシモンドが迫って来た蛇を凍結させる。
「これしき!」
フラマーラも蛇を一瞬で灰へとかえる。
「おい、イビルハンガーが外に逃げたぞ!」
壊れた壁からイビルハンガーがその部屋を出て行ったようだ。
追いかけて外に出ると、城と同等の大きさの巨大な蛸のような怪物が出て来た魔王達を見下ろしていた。
「な、なんだあの化け物!!」
外にいた兵士たちもその姿を見て驚愕する。
城を挟んで反対側からもその姿を確認出来る程の大きさ、黒い体に紫の煙を纏い、無数にある足の先は蛇のような頭がついている。
「破壊者を使役できるのか?」
破壊者を見上げてそう言うテネバイサス。
「そうみたいだな、でもそのせいか前に見た奴よりも大分小さいぞ」
フラマーラのいう通り、経済力の国で出て来た氷の破壊者に比べたらそこまで大きいというわけではない。
「とりあえずこっちも使い魔だしておきましょうか」
「そうするか」
魔王達は自分達の使い魔を出す。
すると破壊者はその無数の足を振り下ろして来た。
しかしその足は一瞬で凍結させられる。
「フローズンブルーム!この醜い化け物を美しい氷像にしてしまおうか」
「――KYOOOOO!!」
今度は手先にある蛇の頭のような所から毒の霧を吐き始めた。
その霧に触れた植物は次々と枯れて行く。
「毒か、ワタシらには効かねぇが。ブラッディピーク!」
焔で毒の霧を一瞬で焼き払う。
「さぁダーリン、私達もいくわよー!エターナルレイちゃん」
「ああ、行くか。シャドウダイバー!」
アウレンデントとテネバイサスが各々の使い魔に乗り、敵へと向かう。
白虎のエターナルレイは雷の牙を出し、破壊者の身体を斬り裂きながら駆けまわる。
「シャドウダイバー!奴をこの場から動かすな!」
テネバイサスの掛け声に対応し、黒龍シャドウダイバーは影となって地面に広がった。そこから無数の鎖が現れ相手を拘束した。
「Kaaaaa……!!」
破壊者は拘束されながらも暴れる。
「どうどう」
鎖を操りながら相手の周りを囲うように、影から現れた龍と共に飛ぶテネバイサス。
「こいつの足すぐに生えてくるな。これで美味いなら文句なしの食材なのに」
「蛸って美味しいのかしら」
破壊者の足を切り裂きながら空を翔けるフラマーラとアウレンデントたち。
「これでもくらえ!」
「ビリビリしちゃいなさい!」
二人は強烈な勢いで焔と雷をその手から放つ。
「GYOOOOO!!」
破壊者は口を大きく開けた。
不気味に並んだ牙がぬらりと粘液性のある光を反射する。
そしてそのまま自らに向けて放たれた焔と雷を飲み込んでしまう。
「本当に食らいやがったよ」
破壊者はもう一度口を大きく開ける。
「おい、まさか」
「あらら」
二人は同時に飛行高度を一気に上げた。
それを追うグロテスクで大きな口から紫の焔と雷を二人目掛け放った。
「小賢しい事するぜ」
二人はその攻撃を避けて再び二手に分かれ、攻撃を再開する。
「この破壊者は再生能力だけは高いみたいだな」
「ああ、それに奴の体内に妙な魔力を感じる。とりあえず攻撃を続けるしかないな」
グレイシモンドとテネバイサスは地上で相手の足や毒で周囲に広がらないように対処していた。
一方その頃、城を挟んで反対側。
「すげぇ……あんな化物相手に戦ってるよ。あの人たち」
「ありがとうな。こっち側について正解だったわ」
蛇の獣人と鳥の獣人は拘束された幹部たちと共に外でその光景をみてそう言った。
「ふぅーふぅー。貴様ら……」
聞き覚えのある声に呼ばれる兵士たち。
声の主が誰なのか、姿をみずとも彼らには分かる。
兵士たちの血の気が引いていく。
「い、イビルハンガー!!」
そこにはイビルハンガーが立っていた。
彼には歪な形の翼があり、角もちぐはぐな生え方、顔や手足までもどの生物の獣人かは分からない。獣のパーツがあるだけでそれらが全て嚙み合っていない。
初めて日の下でみる彼の姿に思わず困惑する兵士たち。
「役立たずの裏切り者どもが!俺に食われたいって事なんだよなぁ!?」
イビルハンガーがそう言って怒りの声を上げる。
すると突然拘束されていた幹部たちが痙攣し始めた。
「お、おい!どうした!」
獣人たちは側にいた幹部を起こそうとする、しかし
ガラン
と幹部を持ち上げた際に彼らがつけていた鎧の兜が転げ落ちる。
「え……?」
「ぶはははは!!幹部のバカ共は俺が食ってやったぜ!!」
高笑いするイビルハンガー。
「そいつらには俺の魔力を少しだけ分けていてなぁ。もしもの時はその魔力で内側から食えるようにしてたんだ、賢いだろ?そいつらが万が一にも逆らったり、あるいは俺が戦わねぇとならねぇ時の備えってやつさ」
ただ虚しい鎧の転がる音だけ残し幹部たちは姿を消した。
皆イビルハンガーの餌食になってしまったようだ。
「そ、そんな……」
助けようとした幹部たちが消えてしまい、膝から崩れ落ちる兵士たち。
「さて、次はおめぇらだ。まぁ大した量にならないが、腹の足しにはなるだろう」
イビルハンガーはズッズッと引きずる音をたてながら兵士たちに近寄る。
「ち、ちくしょう!来るな!」
兵士の一人が矢を放つ。
相手の体に刺さったかと思えば、まるで沼に沈むかのようにズブズブと身体の中に飲み込まれていく。
「こんなので俺の腹が満たせるか!」
イビルハンガーは自分の腕にまたあの白い粉をかけて食べ始める。
「お前らみたいなのでも【これ】をかければ多少はましになる。頭からよく噛んで喰ってやるからな」
じわりじわりと迫ってくるイビルハンガーに対して、兵士達は物や武器を投げつけるしかなかった。
「やめろ、鬱陶しい。ついつい食っちまうが、大して腹の足しにならねぇ不味いもんを差し出すんじゃねぇ!」
投げつけられた物をすべてその身体に飲み込みながら近寄るイビルハンガー。
一番手前にいる兵士に手を伸ばす。
「あ、ああ……」
「まてよ醜い化物め!」
「あ"?」
伸ばしたてを止めて、声の方向をみるイビルハンガー。
蛇の獣人が槍を構えていた。
「おまえ今なんて言った!」
イビルハンガーが声を荒げる。
「おいおい、醜い上に耳も悪いなんてかわいそうだな!テメェはこの世で一番醜い存在だって言ってんだよ、化け物!テメェの見てくれも、その中身もな!」
「ぐっ!き、貴様ぁぁッ!!」
標的を変えて蛇の獣人の方へと進むイビルハンガー。
「そうだ来やがれ!俺が相手してやる!食っても良いんだぜ!そうしたらテメェのその腹の中で暴れ回ってやる!」
「黙れ!」
イビルハンガーは蛇の獣人にその手を伸ばした。
蛇の獣人の左腕は食われてしまう。
「……ッ!!」
「ブハハハ!どうだ!痛いだろ!?苦しいだろ?俺を馬鹿にしやがって、苦しんで死んじまえバーカ!!」
片腕を食われた蛇の獣人は槍を地面に突き立て身体が倒れないようにしている。
「なんだ?片腕だけで随分と得意気だな?シュ、シュールルルッ!」
そう笑ってみせる蛇の獣人。
「減らず口を!」
再び手を伸ばそうとするイビルハンガー。
しかし、蛇の獣人にその手が届く直前に地面から樹木が生えて、蛇の獣人を守った。
「こ、これは!!」
イビルハンガーが一歩退く。
「あなた……一体何をしているんですか」
アギーだ、彼女はイビルハンガーの後方に立っていた。
彼女は周囲を見渡す、転がっている鎧、それを大事そうに抱えている兵士達。イビルハンガーに対峙している片腕を無くした蛇の獣人。
それをみて何が起きたのか彼女はすぐに理解した。
「何って飯を食ってたんだよ、使えねぇカス共でも腹の足しにはなるからな」
ゆっくりとイビルハンガーは振り向く。
「あなたは……この国をなんだと思ってるんですか。これだけ皆が苦しんでいるというのに何を思うのですか」
「何いってんだ?この国にあるものは全て俺のものだ!俺を満たす為にある、他の馬鹿な連中は黙って俺の養分になれば良いんだよッ!ブハハハ」
そういって汚く笑うイビルハンガー。
彼の態度にアギーが望んでいたものは一欠片もなかった。
「分かりました……あなたの事は」
アギーはイビルハンガーを通り過ぎて蛇の獣人の元へといく。
「シュールルル、お嬢さん見っともない所見られちまったな」
「ありがとうございます、兵士様。皆さんを守ってくださったんですね。ここからは任せてください」
アギーが彼の体に手をかざすとそこから腕が生えてきた。
「なっ!?腕が!」
その光景にイビルハンガーが驚く。
まるで何事も無かったように、綺麗な腕が再生していた。
「これでもう大丈夫ですあとは私が……」
アギーの手から小さな樹木が生え始める。
その樹木集まり斧へとなる。
「この人を『ぶっ飛ばします』」
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