No.18 晩餐会!そして次の国は緑な場所でした!


破壊者と呼ばれる怪物との戦いを終えて、アギ―達は国を挙げての晩餐会でもてなされていた。


「そう言えば、君たちはティターノのところに言ったのだろう?どうだった?」

次々と運ばれてくる食事と酒を前にグラドはアギ―に質問をした。


「ちょっと怖そうな人でしたが、いい人でした!」

「ふふ、そうだな。人相はまあ極悪人のそれだが信念の通った男だ。私も彼の実力と人間性には信頼おいているよ」


食事を前にルンルンなアギ―はそう答え、その返答聞いたグラドは笑って頷いた。


「だが残りの統治者は私達のように話が通じる相手だと思わんことだね。力も思想も危険な連中だ」


「そ、そんなに恐ろしいのですか、ゴクリ」

その話を聞いてスープを飲むアギー。


「はは!警戒はすれど怯える事はない、君も十分強いのだから」


「強い?私がですか?えへへー」

「なーに照れてんだ、リップサービスってやつだよ」


アギ―の隣からフラマーラが口をだす。


「そんなことはない、君がいなければ私とグレイシモンドは負けていただろうから」

「おいおい、あまりおだて過ぎないでくれ。また無茶な行動をしてしまうだろう」


グレイシモンドは隣からグラドに注意をする。


「ははは!君はいい仲間も持ったねアギーさん」

「はい!みんな良い方たちです!」

「だからワタシ達は良いヤツじゃねぇっつーの」


こうして一行は戦い後の休息を楽しんだ。




翌日、アギ―達は次の国に向けて準備を済ませ、外に出ていた。


「ここから一番近いのは資源の国だ、この列車の線路にそって進むといい。だが本当に列車に乗らなくて良いのかい?」


「そんなのよりもワタシの焔でぶっ飛ばした方が速いからな!」

手から焔を出して得意げに言うフラマーラ。


「そういえばアギー殿、この国に迷うことなく来れたんだって?一面の白景色で慣れ親しんだ者でも迷うことがあるというのに一体どうやって来たんだい?」


「どうやってですか?うーん、ただ進む方向に進んだだけとしか」

アギ―は額に指を当て唸りながらそう言った。


「ははは!やはり君は凄いね!きっとこの旅は成就するだろう!私も最大限のサポートはさせて貰うよ。これを持っていくと良い」


「これは?」

アギ―はグラドから手のひらサイズの板状の結晶を渡される。


「これは私へのホットラインだ。それを使えば直で私と話すことができる、こちらからも何か情報を仕入れたら伝えるよ」


「ありがとうございます!ではこれはグレイシモンドさんに」

「なに?」

不意に渡された結晶の板を手に持って呆気にとられるグレイシモンド。


「だって久しぶりの再会だったんですよね?それを使えばいつでもお話できますよ」

アギ―は微笑んでそう言うと、グレイシモンドはうつむく。


「アギー……ッ!」


次に顔を上げたグレイシモンドは涙を流していた。


「えっ、泣いてる。マジかお前」


フラマーラは少し引いた。


「アギーちゃんに1ポイントねー♡」

「なんだそのポイントは」



一行はテネバイサスの煙の上に乗っていた。


「それでは皆様お元気で!」


「アギ―殿もお達者で!」

「アギ―様!そして魔王様方!私達を守ってくれてありがとー!」


「よっしゃお前ら後ろから離れろよ!かっ飛ばすぜ!!」


グラドと国民達の感謝の言葉を送られながらアギ―達は次の国へと向かう。




ある程度進んで行くと極寒だった気候は落ち着き。穏やかな気候で野宿していた。

焚火を皆で囲んでいる。


魔王達は起きていたがアギ―はアウレンデントの膝の上で眠っていた。


「まったく、無防備にスースーと寝息を立てやがる」


「それにしても本当、アギ―ちゃんって勇気あるわよね」

頭を撫でながらアウレンデントはそう小声で言う。


「なぁ、テネバイサス。お前以前アギ―の記憶をみたのだろう?貴様はこの中で特にアギ―に肩入れしているように見えるが。何をみたんだ」


「……」

グレイシモンドにそう言われ、少しばかり黙るテネバイサス。


「ただ親との記憶、植物と過ごした記憶、いつも同じ自然の中を駆けまわる記憶、見えたのはそれだけだ。アギーは余りにも多くを背負っている……だがそれでも何ともないように笑っている。俺には出来なかったことだ」


「ダーリン……」


「ふん、ただこいつが能天気すぎるだけだろ。それで自分を顧みたところで大した意味はねぇだろ」

フラマーラはそういって横になる。




アギ―達は緑豊かな高原に来ていた。


「わあ!とっても綺麗なところですね!」

青々とした高原をみてそうはしゃいだアギ―だった。


「何してる、早く行くぞ」

「あれ?でも線路が続く街はあっちですが」

その高原から見える街を指さすアギ―。


グラドが行こうとしている方向には集落と畑があるだけ。情報収集なら大きい街の方が良さそうなものだが。


「ああ、先程グラドから連絡があってな、まずは彼の部下に会いに行く」


「他人の領地なのに部下がいるのね、監視?」

グレイシモンドがもつ結晶をみながらアウレンデントが話す。


「そうだ、彼はかねてよりこの資源の国と技術の国は怪しいと睨んでいて、部下を潜伏させ監視しているらしい。この連絡用の結晶も街に入れば使えん。魔力を探知されてしまう可能性が高いからな」


「そういえば街で暴れてた連中もこの国出身という話だったな」

「お互いに疑いあうか、素敵な信頼関係だな」



集落に訪れたアギー達は一軒の家の前に来ていた。


「ここだ」

グレイシモンドがノックする前に内側に扉が開く。


「お待ちしておりました。さあ、どうぞ中に」

扉を開けた相手は一行を家の中に迎え入れた。


「君たちが彼の部下の」

「はい、諜報機関のメンバーです。私がこの地での諜報活動の責任者、ヒアーです」

彼らはアギー達が部屋に入った後に周囲を見渡し扉をしめ、片膝をついて頭を下げた。


「諜報機関がそんな簡単に名乗っていいのか?」


「我らがグラド様の大事なお方ですから。グラド様と接するつもりで、と伝えられていますので」

頭を下げたままヒアーはグレイシモンドにそう伝えた。


「そうか、ならば楽にしろ、そしてこの国の情報を頼む」

グレイシモンドに許可され、諜報機関の者たちは顔をあげて話す。


「はい、この国を統治しているのはイビルハンガーというものです。能力は闇。この国の役目は主に食糧資源や鉱物資源などを採取採掘し、各国へと供給することです」

端的に情報を伝える諜報部員の者。


「こちらがここで採れた野菜ですか。トマト、とっても大きいですね、あれ?」

アギ―が部屋の袋に入っていた野菜をみて首を傾げる。


「どうかされましたか?」


「いえ、とても大きく育ったお野菜ですがなんというか元気がないような」

「そりゃあ収穫されてんだから元気もなんもねぇだろ」


フラマーラがアギ―の後ろから野菜をみてそう言った。


「それと……その、失礼ですが皆様はどうしてそんなに……そのご飯はちゃんと食べられているのですか?」


アギ―が言う通り彼らの頬は頬骨が突きでそうな程痩せており、服で見えないがその病的に細い手先から全身もどうようにやせ細っているのが分かる。


資源力の国に住む者とは思えない状態だ。


「ええ、ここで採取された殆どが統治者の元か他国へと流れていきます。みなその日をなんとか凌いでいるのです」


「そんな……」

やつれた顔で微笑むヒアーをみてアギ―は胸が苦しくなる。


「こいつが、この国の植物には元気がねぇって話に関しては?」

「あ、あの、私の個人的な感想なので」


「ええ、我々は気付くのに半年はかかりましたが。恐らくこれが原因ではと」


そう言ってヒアーが取り出したのは液体が入った小さな瓶を取り出した。


「これが、この国を破滅へと向かわせている物です」


妖しく光るその瓶の中身は一体何なのか。

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