No.17 無事に皆さんを守れてよかっ、って何で殴るんですか!?


突如として現れた超巨大生物。


圧倒的な力を持つ相手に苦戦するグレイシモンド達だったがアギーの策により、見事この強敵を撃破。



「う……うーん」

アギーは目を覚ました。


視界には何やら色々な人がせわしなく動いているように見えた。


その視界がようやく鮮明になって来た所で

「ようやく目を覚ましたか」


グレイシモンドの声が聞えた。


「あれ、グレイシモンドさん?ここは……?」

「グラドの城だ」


周囲をきょろきょろと見回す彼女に対してグレイシモンドが答える。


「おうおう、ようやくお目覚めか。このっ!」

するとその部屋にフラマーラが現れ、アギ―の頭をはたいた。


「痛いッ!何でですか!?」

「うるせぇ!話に聞いてた以上にめちゃくちゃな事したみたいじゃねぇか!おめぇが消えたら私たちもただじゃ済まねぇんだよッ!!」


フラマーラはアギ―をヘッドロックする。


「えーでもフラマーラさん協力してくれたじゃないですかー!」

「あんときは冷気止めるので頭回ってなかったんだよ!」


二人が話をしているとアウレンデントとテネバイサスが部屋に入って来た。


「フラマ―ちゃんはアギ―ちゃんが元気になって良かったって言ってるわ♥」

「さっきまで泣きそうな顔をしてたのにな」

「言ってねぇわ!!」


「やめんか、まだ病み上がりだぞ」

グレイシモンドが止めに入る。


「おお!我が国を救った英雄様のお目覚めか!」

騒ぎを聞きつけてかグラドも部屋に入って来た。



落ち着いた所で再び話はあの現れた超巨大生物についてに戻った。


「君達にも感謝している。三人が街を守ってくれていなければ、民は生きてはいなかった。そうなればあの怪物を倒したところで意味がない」


グラドは街を守ってくれた三人にも感謝の言葉を伝えた。


「あの怪物はなんだったんだ?」


「それについては大方目星はついている。魔王が、つまりこの世界の魔王が所有していた文献には破壊者と記されていた。単なるおとぎ話等の類いかと思っていたが」


グラドの返答を聞いてうーんと唸るフラマーラ。


「破壊者か、確かにあんなのがいたら周囲はタダじゃあ済まねえな」


「魔力で言えば封印される前の我と同等であった。あれが本来は祠を守っていたのだろうか。にしても少し規模が大きすぎる気はするがね」


魔王達は各々あの怪物、破壊者に何か思う所があるのかグレイシモンドの発言から黙っていた。



「あ!そう言えばグラドさん、これくらいの木の箱って知りませんか?あの祠にあったと思うのですが」


アギ―がきくと、グラドは懐からあの木箱を取り出した。


「ああ、それで言うとこんな木箱があったが」


「あ!それですそれ!それが欲しくて祠に行きたかったんです!」

アギーはパアッと表情を明るくさせる。


「倒れていた君の足元にあったよ。私にはとんとこれが何か分からないが。どうぞ、だがその箱は繋目もない、どうやって開けるんだい?」


グラドはその箱をアギーに渡した。

箱がアギーの手に渡った瞬間、箱は開かれ中から光るリングが飛び出す。

そしてティターノの場所と同様にアギーのネックレスの一部となる。


「ほー、これは興味深い」


「よーし!また力が戻ったぜ!」

「重ねて礼を言うよ、グラドよ」

嬉しそうにはしゃぐフラマーラを他所にグレイシモンドはグラドの手を握って感謝した。


「ッ!なに、私がしたことなんてそんな大した事ないよ」

「本当にお二人は仲良しなんですね!」

その二人をみてアギーが言うと、グラドが微笑む。


「ああ、彼は私の心を救ってくれた恩人なんだ。何者よりも愛おしく大事な存在だ」


「そういえば二人はどうやってお会いしたのですか?」

アギ―はふと二人の馴れ初めに興味を持った。


「昔、彼らが封印されるよりも前の話さ。当時から私はこの世界の魔王に仕えている身で、つまり私達は敵だった、その頃の私は無気力でね。魔人という忌み嫌われる種族、その上魔王は自分の事を兵器としかみてなかった。そのせいで随分とすさんでいたよ、そんな時に出会ったのが彼でね」


そう言うとグラド小さく笑った。


「どうしたんですか?」


「いやぁ、すまない、あの頃はグレイシモンドに酷く叱られたものでね。『そんな軟弱な精神を持って自分の前に立つんじゃない』って初めてだった……あんな正面から物を言ってくれる人は」


「へぇ、お前にも熱い時期があったんだな」

「うるさいぞテネバイサス」


すこし恥ずかしそうにするグレイシモンド。


「そこで私は彼の強さ、美しさ、そして何より私を真っすぐと見詰めたその姿勢に心を撃ち抜かれてしまった……これが私達の馴れ初めの大方な部分だ」


グラドはそう言ってアギ―に微笑んだ。


「昔話はそれくらいにして、少し試したい事があるから外に行かないか」

そう言ってグレイシモンド達は城前の広大な庭に出て行く。



「よーし、ちょっと下がってろ」


城前の広場で魔王達が並んだ。


「何をされるのですか?」


「これからの旅ではあの破壊者とやらを相手にする事になるだろう。となれば人手が少しあった方がよいと思ってな」

「ちょっと私達のお手伝いさんを作ろうかなって」


グレイシモンドとアウレンデントが説明すると、魔王達の目が一瞬光りを放った。

すると各魔王の前に使い魔が具現化する。


フラマーラの前には炎の翼と尾羽を持つ怪鳥が現れた。

「うーん、良い感じだな。よしお前はそうだなぁ、ブラッディピークだ!」

ブラッディピークを撫でて彼女は名付ける。


グレイシモンドの前には氷の甲羅と蛇のような尾を持つ亀が現れる。

「ふむ、我に相応しい高貴な姿ではないか。フローズンブルームとするか」

フローズンブルームはグレイシモンドに頭を下げた。


アウレンデントの前には光の牙と淡く光を放つ模様を持つ白虎が現れた。

「うーん、良い感じのキラキラね。エターナルレイって感じねー♥」

エターナルレイの顎下を指でかいてあげるアウレンデント。


テネバイサスの前には紫煙を纏う黒龍が現れた。

「うん、お前はシャドウダイバーだ。よろしくな」

シャドウダイバーの顔を優しくなでるテネバイサス。



「うわー!皆さんも召喚術が使えるんですね!」

これを見たアギ―は興奮気味にその現れた使い魔たちに近寄る。


「アギ―が使う召喚術とは違う。俺たちの力を使用して生み出したものだ。この者達がいれば、出力に制限がかかっているこの状態でも通常以上に力を発揮する事が出来る。言ってしまえばもう一つの出力口を作ったと言った所だな」


テネバイサスはアギ―に説明した。


「なるほどですねー」

使い魔たちと触れ合いながら返事をするアギ―。


「アギ―、お前理解してねぇだろ」


使い魔たちは各々の属性、炎氷光闇となって魔王達の身体に戻って行く。


「あら、みんな戻っちゃいましたね」

するとアギ―の腹がクエ~っとなった。


「あ……あはは、ごめんなさい。お腹減っちゃいまいた」

「ふふふ、あれだけの事があったんだお腹が空いて当然だ。では我が国を救ってくださった方々を盛大にもてなすとするか」


グラドにそう言われ、アギ―達は城へと戻って行く。




「アギ―様とそのお仲間の方々に是非こちらを!」

「うちの食材も使ってくれ!」

その日、城には大勢の国民がアギ―達へ一言でも感謝の気持ち伝える為にと押し寄せた。


「すごい人ですねー!」

「ふふふ、それもそうさ、今彼らはハッキリとした希望を見出せたんだ」

城のベランダからその光景を見ていたグラドとアギ―。


「そうだ、アギ―殿はまだみていなかったか。ちょっと見に行こうか」

「ん?」


二人は山が見える、大きな窓の前へ。


見える山の中に一際高い山があった、それは山は先ほど破壊者と闘った場所だ。


頂上には氷像となった破壊者

そして遠くから見ても分かる程に巨大で何とも美しい極氷蓮の花が咲いていた。


「すごい……綺麗」


美しい光景を目の当たりにしたアギ―はそれに見惚れた。


「あれこそが、君が民に与えたものだ。私には絶対に成し得ないことだ、本当にこの国の代表として感謝してもしきれん程だよ」


そう言ってグラドは優しくアギ―に微笑んだ。


「さあ、そろそろ食事の準備が出来た頃だ。戻ろうかね」

「はい!お腹ペコペコです!」


二人はみんながいる所へと戻る事にした。


(アギ―殿、貴女には私達、4人の魔王、そしてこの世界の魔王にもない力がある。その力できっとこの世界は再び息を取り戻すだろう……まだ若き英雄よ)

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