No.16 みんなを守る為頑張ります!でもこれで飛ぶんですか!?


突如現れた怪物によって生み出された猛吹雪、国を飲み込もうとするそれをフラマーラ、アウレンデント、テネバイサス達が防いでいた。


その間アギ―が国民を国の中央に避難させる、しかしそれだけでは事態は解決しない。吹雪は時間が経過するごとにその勢いを増し、魔王達は徐々に押されていた。


何か手を打たねばならない、そうなった時アギ―は何かを思いつく。そして必要なものを手に入れフラマーラの元へと向かった。


「私をグレイシモンドさん達の所へ送って欲しいんです!」


「はぁ?!」



一方その頃、グラドとグレイシモンドは猛吹雪の竜巻の中へと入り、怪物と対峙してた。


「氷の牙のセンスは良いが些か肥え過ぎかな」


怪物を見上げそういうグラド。


「この空間、あいつらではまともに活動することすら困難であろうな」


グレイシモンド達がいる竜巻の中は超低温空間。常人、いや常人でなくともこの空間に足を踏み入れればその部位から凍りつき砕ける事になるだろう。


「とにかくこいつを片付けんと、どうにもならんな」

「丁度良い。グレイシモンドよ、君にこれを渡しておくよ」


グラドはそう言って一振りの剣を、グレイシモンドに渡した。


剣は氷のように淡い水色かかった細い刀身を持つ、とても美しいレイピアだった。


「君が来た時に渡す為に作らせたものだ。切れ味もさることながら魔力伝達力と膨大な魔力を注がれても壊れない性質を持った剣だ。そして……」


グラドは同じ外見の剣をもう一本取り出す。


「お揃いだ」


「なんと……!!君は本当にどこまでも私を喜ばせてくれる。ありがとう、この剣存分に振るわせてもらおう!」


グレイシモンドとグラドは目の前の巨大な怪物に剣を向けた。


「それではいくぞ!」

「ああ!」


二人はレイピアと氷をもって攻撃を仕掛けた。


すると象の怪物はその攻撃を察知し、全身に氷の鎧をまとい始めた。


二人の攻撃はその鎧によって防がれてしまう。


「鎧とは、こんな巨体で守りを固めるとは随分と用心深いな」

「ああ、思いのほか小心者のようだね」

グレイシモンドとグラドはその鎧をみて言った。


相手の氷の鎧はまるで氷の大地を切り出したかのように分厚い、並大抵の攻撃では傷つける事すら困難であろう。


二人は引き続き攻撃を仕掛ける。


剣に魔力を流し込み斬りつけた。

鎧を深く斬る事が出来た、しかし斬られた直後に氷の鎧は修復されてしまう。


「存外小心者だな。そこまでして傷つけられたくないか」

瞬時に埋められていく鎧の傷をみてグラドが言う。


「今の我々で奴に外傷を負わせて倒す事は難しそうだな。魔力に干渉する事が出来れば、この邪魔な山を内側から氷にできるだろう」


グレイシモンドはこの巨大な敵を切り崩すには今の自分達では能力不足だと判断した。


「その為には奴の肉体に直接触れるしかないな、とにかくあの鎧を砕くしかないね」


それからも二人は攻撃を続けた。


しかし有効打を打つこと敵わず、相手の鎧はいまだ健在だ。


「はぁ、はぁ……」

少しよろめくグラド。


すると相手の怪物は鼻先から更に超低温の冷気を放つ。


その冷気で体の一部が凍りはじめるグラド。


彼に駆け寄るグレイシモンド。


「大丈夫かッ!!?」


「ああ、この環境は流石にね。コアがあろうがなかろうがそもそも私は”君”ではない、適応できる状況に限界は存外低いものさ」


グラドは笑ってみせるが明らかに弱っていた。


「無理をするな!ここは我に任せて……」

彼をみたグレイシモンドがそう言うと彼の腕を掴むグラド。


「私の大切な人、その仲間、そして私の国民たち。無茶や無理なんて安いもんだ、その者たちの明日を守れるのなら」


身体の表面が凍りつくもグラドは前に進む。


「グラド……」

彼の眼、彼の行動を観たグレイシモンドはこれ以上止める事が出来なかった。


すると空から


「うわあああああああ!!どいてください--!!」


とアギ―が叫び声を上げながら降って来た。


「アギー?!なぜここに!?」

グレイシモンドが驚く。



少し時をさかのぼってフラマーラとアギ―。

「フラマーラさん!私をグレイシモンドさん達の元へ!」


「はぁ?!氷漬けになりてぇのか!?」

両腕から炎を放ちながら目をアギ―に向けるフラマ―ラ。


「試してみたい事があるんです!これが上手く行けばこの国を助けられるかもしれないんです!」


真剣な表情のアギー、それをみて大きくため息をつくフラマーラ。


「はぁ~~ったくしょうがねぇな!!」

フラマーラは炎の球体を腕から放つ。


炎は吹雪を抑えているが先ほどよりはだいぶ弱い、吹雪の前線がかなり国に近づく。


「よし、じゃあこの炎が消える前にさっさとやるぞ。こっち来い」


「ありがとうございます!」

アギ―はフラマーラの元にかけよる。


フラマーラはアギ―に向かって手をかざす、すると彼女は淡い炎の膜につつまれた。


「これであの空間でも少しばかりは動けんだろ。だが本当に少しの間だからな」

そう言ってフラマーラはアギ―を掴む。


「え……?」


フラマーラは背中から弓を取り出す。

そして炎の矢を生み出し、そこにアギ―をくくりつけた。


「あ、あのフラマーラさん?」

「あ?まさか一緒に行ってくれると思ったのか?そんな悠長な事してられるかよ。これで一気にビューンと飛んで行け」


「え、いや、でもこれって大丈夫なんですか?!こういう風に使うものじゃないですよね?!」

アギ―が動揺するが、もうすでにフラマーラは最大まで弓の弦を引いていた。


「道具の使い方なんて人次第、だろ。そんじゃあ行って来いッ!!」


「ぎゃああああああああッッ!!?」


叫び声と共にアギ―は飛んで行った。



「という感じで来ちゃいました」


「全く、両者とも何を考えている!早く戻れ!この炎でも長くは持たないぞ!」

グレイシモンドがアギ―を帰らせようと肩を掴む。


「……」

アギ―は何も言わなかった、だがその眼には確固とした意思があるのをグレイシモンドは感じ取った。


それは先ほどのグラドと同じものだった。


「……はぁ、君もか。分かった、簡潔に話せ、何か考えがあるのだろう」


「はい!」

アギ―は彼女が思いついた事を話した。


それを聞いたグレイシモンドは一瞬眉間にしわを寄せる、しかし頷きその考えを実行する為にグラドにも説明した。


「だいぶ無茶な賭けだが、大丈夫なのか!」


「なに、信じてくれて構わん。我らが召喚士を」

二人は剣を構え攻撃を開始する。


身体を這うように駆け回り剣で斬りつけまくる二人。


先ほどと同様にすぐに斬りつけた部分は氷で閉ざされてしまう。

だが違う点が一つあった、それは斬りつけた部分に種が仕込まれている事だ。


「これで一通りは設置できたか、アギ―今だッ!!」


「はい!」

アギ―はその種達に意識を向けた。


すると怪物の鎧の中にあった種が成長し始める。


極氷蓮、その植物は氷を少しずつ溶かしながら成長していく。


この事に気付いたのか、相手の怪物はアギ―に向かって冷気を集中的に放ち始めた。


炎のバリアに守られているとしてもそのバリアごと凍らせる冷気。

アギ―の身体に氷が走る。


相手は冷気の勢いを更に強くした。絶対に思惑通りにさせんという事だろうか。


その冷気がアギ―に到達する直前でグレイシモンドが彼女の前に現れる。


「グレイシモンドさんッ!!」

「構うな!集中しろ!」

彼は冷気を直接その両手で抑えている。


「ッ!!はい!」

アギ―は再び意識を植物に向ける。


(みんなを守る為に、どうか力を貸してくださいッ!!!)


彼女の眼が深緑の光を放つ。


すると植物達は急激に成長、互いの根を絡ませ、氷の鎧にヒビを走らせる。


最後には一つの大きな花となった、そしてついに氷の鎧は砕かれた。


「鎧が砕けた!」

「行くぞッ!」

この時を待っていたグラドとグレイシモンドは同時に相手に飛び掛かる。


怪物の背中にその剣を突き刺す。


「ブオオオオオオオオオッ!!!!」


怪物は全身が凍っていく中、最後の咆哮を放つ。


「よかった……」


それを見たアギ―はその場で倒れた。


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